“卵は横が強い”衝撃の一報

卵の殻の強度は古くから興味深い話題で、学校の科学コンテストなどで定番の「卵落としチャレンジ」(一定の高さから生卵を落として割れない工夫を競う実験)にも取り上げられてきました。
多くの教育現場や科学啓蒙サイトでは「卵は縦向きにした方が強く、割れにくい」と指導されており、実際に市販の卵パックでも卵は上下を縦にして収められています。
卵の丸みを帯びた端の部分(尖った先端や丸い底)はアーチ状の構造であり、アーチやドームが重さを支えるように衝撃をうまく分散して受け止めると考えられてきたからです。
言い換えれば、卵を縦向きにすると殻がたわみにくく(剛直で)、力を加えても変形せずに耐えやすいため割れにくいと信じられていたのです。
MIT土木環境工学科でも、新入生向けの卵落とし実験を毎年行っており、指導に当たっていたタル・コーエン准教授も長らく「卵は縦向きが一番割れにくい」と学生に教えてきたそうです。
しかし、「3年ほど前から、本当に縦向きが最強なのか疑問に思い始めた」とコーエン准教授は振り返ります。
そこで研究室に残っていた卵を使い、手探りでいくつか実験してみたところ、「縦向きの方が硬いと確認できると思っていた」のに「データを見たらはっきりしなかった」といいます。
この思いがけない結果に研究チームの好奇心に火が付き、カジュアルな問いかけだったものが本格的な研究プロジェクトへと発展しました。
卵の落下方向による割れやすさの違いを定量的に調べ、直感と実際の力学特性の食い違いを明らかにすること──それが本研究の目的となりました。