単三電池以下の電力でウランがとれる

新たに開発された「Bipolar EUEシステム」は、電極のプラス極とマイナス極の両方をうまく使って、海水の中のウランだけを狙って取り出す仕組みです。
マイナス極側では、海水中を漂うウランイオン(UO₂²⁺)に電子を与えて、主にUO₂などの不溶性化合物として沈殿させ、固体の形で回収します。
このとき、ウランはまるで「水中に浮いている小さな金属の欠片が、マイナスの磁石に引き寄せられてくっつく」ようなイメージで捕まえられるのです。
一方、プラス極側はウランそのものを扱うわけではありませんが、ウランをより低い電圧で集めるための助手の役割を果たします。
普通なら水を電気分解して酸素を作る反応が起こるため、かなり高い電圧が必要です。
しかしこのシステムでは、銅を酸化させるという別の反応を採用し、酸素を発生させないルートを用意することで、必要な電圧を大幅に下げることに成功しました。
イメージとしては「険しい山道を避けて、なだらかな道を選ぶ」ようにしてエネルギーの負担を軽くしているのです。
その結果、従来法の半分以下となる約0.6Vという、家庭用電池でも十分駆動できる低い電圧でウランを分離できるようになりました。
実験では、研究室で作ったウラン濃度1~100ppmほどの溶液で、ほぼ100%という非常に高い回収率を記録しています。
濃度が薄い状態でもウランをほとんど取り逃がさず回収できるので、これは従来にはない驚くべき効率といえます。
さらに実際の海水を使ったテストでも、ウランだけを選んで回収する力がしっかり発揮されました。
海の中にはさまざまな金属や塩が含まれていますが、このシステムでは、集められた金属の85%以上がウランという高い選択性が確認されたのです。
また長時間の連続稼働でも性能がほとんど落ちず、45回もの繰り返しテストに耐えることが示されました。
エネルギー消費の面でも、1kgのウランを集めるのに必要な電力は1,944kWh程度と見積もられ、ウランを燃料にして得られる発電量から考えると十分に許容できる数字といえます。
さらに電気代については、1kgあたり約83.2ドル(日本円で約1万1千円)という試算が出されており、これは昔からある吸着法などより大幅に安価です。
具体的には、高濃度ウラン(10ppm)を溶かした模擬海水での電気代が1000倍安く、天然海水(3ppb)での電気代が25倍ほど安くなりました。
(※また総合的なコストも2.5倍から4.3倍安くなりました)
こうした成果は、海水に含まれるわずかなウランを効率よく集められる道を開いたことになり、今後の省エネとコスト削減の両面で大きな可能性が期待されています。