仲間同士で薬を塗り合っていた
本調査では、ウガンダにあるブドンゴ森林にて、ソンソ群とワイビラ群という2つのチンパンジーの群れを観察対象としました。
研究チームは30年以上の記録やビデオデータに加え、2021年と2022年の4か月間の現地観察を通して、合計41件のケア行動を記録しています。
そのうち34件が自己ケア(self-care)、7件が仲間へのケア(prosocial care)でした。
自己ケアでは、チンパンジーが自分の傷を舌でなめたり、葉を使って傷口をポンポンと叩いたり、噛み砕いた植物を傷に塗ったりする様子が観察されました。
特に興味深いのはチンパンジーたちがちゃんと科学的に薬用効果のある植物を選んでいたことです。
チームが応急処置に使われた植物を後で回収し、成分を調べてみると、抗菌・抗炎症・鎮痛作用があることが確認されました。
こちらはチンパンジーが自分で傷口のケアをする様子を捉えた映像。
※ 視聴の際は音量にご注意ください。
さらに驚くべきことに、チンパンジーたちは仲間同士でも傷のケアをしていたのです。
他の個体の傷をなめたり、指をなめた後に傷口に押し当てたり、噛み砕いた植物を塗る行動が複数回記録されました。
また研究者は衛生行動にも注目しました。
チンパンジーは交尾後に葉で性器を拭き、排便後に葉で肛門を拭くなど、感染症予防に役立つと考えられる行動を行っていました。
このような行動は社会的絆の強さや群れの衛生環境の維持に寄与している可能性があり、動物界でも高度なコミュニティケアの存在を示しています。