人類だけが“大脳3倍”になった理由を追え!

ヒトの脳は霊長類の中でも際立って大きく、とくにチンパンジーとの共通祖先から分かれて以降、その大きさは約3倍にも拡大しました。
なぜ人間だけがこれほどまで脳を大型化できたのか、その進化のメカニズムは長らく謎のままでした。
ヒトと他の霊長類のゲノムを比較すると、タンパク質をコードする領域にはほとんど違いがない一方で、非コード領域には人類で特有に変化した部分が数多く存在します。
特にヒト加速進化領域(HAR)と呼ばれる短いDNA断片は、ヒトとチンパンジーの分岐後に急速に塩基配列が変化した部位で、これまでに約3000カ所が知られています。
HARの多くは発生を制御するスイッチ(エンハンサー)として働き、脳の発達に関連する遺伝子の近傍に位置することが報告されています。
このためHARの変化が人間の脳を進化させた手がかりではないかと期待されています。
(※これまでにもヒト固有の遺伝子をサルなどの動物に組み込むことで脳を巨大化できることが示されてきました。)
今回注目されたのは、ヒト加速進化領域(HAR)の一つであるHARE5というDNA領域です。
HARE5は染色体10上にある619塩基対の配列で、その中の4カ所がヒトでのみ変異していることが知られています。
HARE5は脳の発生に重要なWntシグナル経路の受容体FZD8遺伝子のエンハンサーとして機能し、マウス胚で神経細胞の産生を促進することが以前の研究で示唆されていました。
しかしヒト型HARE5が具体的にどのように脳の成長に影響するかはまだ分かっていません。
そこで本研究では、ゲノム編集技術を用いてマウスのHARE5領域をヒト型配列に置き換え、その効果を詳しく調べました。
4文字の置き換えでマウス脳が巨大化

調査にあたって研究チームはまず、マウスの胚のゲノム中に、人間のヒト加速進化領域(HAR)の1つであるHARE5配列を組み込んだマウスを作製しました。
そして生まれた改変マウスを育てて観察すると、ヒト型HARE5を持つマウスは通常のマウスに比べて脳(大脳皮質)が平均で6.5%ほど大型化していることが分かりました。
特に脳の最も外側の層(新皮質)の体積が増加し、神経幹細胞である放射状グリア細胞(ラジアルグリア)の増殖が著しく活発化していました。
遺伝子解析の結果、ヒト型HARE5とチンパンジー型HARE5のわずかな配列差(4カ所の塩基変異:1文字変化が4カ所ある)のうち、特に最初の2つがエンハンサー活性を大きく高めていることも突き止められています。
なお、脳が大きくなった改変マウスで学習能力や記憶力が向上したかどうかについては、現時点では明らかになっていません。
さらに研究チームは、ヒトの脳組織を模したオルガノイド(いわゆる「ミニ脳」)を用いた実験も行いました。
ヒト型HARE5を導入したオルガノイドとチンパンジー型HARE5を導入したオルガノイドを比較すると、チンパンジー型HARE5を持つオルガノイドでは神経幹細胞(ラジアルグリア)の数が少なく発達も遅いことが確認されました。
これは、ヒト型HARE5が神経幹細胞の増殖を強く促進し、より多くのニューロンのもとを作り出す効果を持つことを裏付ける結果です。
加えて、オルガノイドの解析からは、HARE5がFZD8遺伝子を介してWntシグナルの伝達タイミングや強度を調整し、最終的に幹細胞の増殖や分化を加速する可能性が示唆されました。
このエンハンサー配列が発生途中の脳内で神経幹細胞の挙動を微調整することで、成体の脳がより大きく複雑になる一因となっていると考えられます。
“塩基4つ”で回路まで変わる――脳進化の新シナリオ

今回の研究で明らかになったのは、ヒト特異的なエンハンサー配列が脳の発生プログラムを微調整し、結果としてより大きく高度な脳をもたらす仕組みです。
ヒト型HARE5を持つマウスでは、胎児期の神経幹細胞が通常より長く自己増殖し、その後に産生されるニューロン(神経細胞)の量も増加しました。
このようにしてニューロンの総数が増え、大脳皮質が厚みと面積を増したと考えられます。
興味深いことに、改変マウスの脳では神経活動のパターンにも変化が見られ、各皮質領域の活動が互いに以前より独立して動くようになっていました。
つまり、一部の脳領域が活性化しても他の領域には波及しにくく、それぞれの領域がより専属に働く度合いが増していたのです。
脳が大型化して回路のモジュール性(独立性)が高まることで、情報処理の分業・専門化が進む可能性が考えられます。
たった数カ所のDNA塩基変化がこのような発生過程と神経ネットワークの構築に大きな影響を及ぼしうることは驚きです。
実際、本研究で対象となったHARE5はヒトとチンパンジーの間でわずか4カ所の違いしかありませんでした。
それにもかかわらず、このわずかな変異がニューロンを生み出すシグナル経路の制御バランスを変え、脳のサイズや回路網の特性を大きく変えていたのです。
言い換えれば、ゲノムのごく微小な変化が人類の卓越した脳の進化を可能にした基盤の一部だったのかもしれません。
もっとも、ヒトの脳進化というパズルがこれですべて解明されたわけではありません。
他にも数千に及ぶHARが存在し、それらが脳や認知機能の発達に寄与している可能性があります。
デューク大学のデブラ・シルバー博士(本研究の責任著者)は「人間の脳を現在のような人間の脳たらしめている仕組みは、実に多岐にわたります」と強調し、HARE5はその一部に過ぎないと指摘します。
研究チームは今後、HARE5以外のHARも含めた包括的な解析を進め、ヒト特異的なDNA上の変化がどのように相互作用して人間の脳を形作ったのかを明らかにしたいとしています。






















これが神聖四文字ってやつですね。
なんか最近の遺伝子研究って踏み込んじゃいけない領域まで来てる気がするな
なんかわかりますけど
何がそう感じさせるんでしょうね
〇〇の遺伝子を組み込んだら□□が6%大きくなった
の構文にいろいろ当てはめてみても、
「ヒト」と「脳」の組み合わせは結構上位に感じます
巨大化、とか言っているけど、たったの6.5%の面積増加。
図を見ても、見た目ほとんど変わらないし。
最近の「一流紙」もしょぼくなったものです。
どうでもいいような研究が塵積って
世紀の大発見や発明につながるのです・・・
アルジャーノンに花束を の世界だ
でも脳が偶然大きくなっただけとかもあるかも
サルと人間の違いは、毛が三本、人の方が多いと教わりましたが、実は四本だったわけですね(笑)
簡単に言うと、カサが増えたということと、その理由はグリア細胞が増えたから。
要は道路網が緻密になったということでしょうか。
とすれば少しは「賢く」?なる要素が増えたのかもしれませんが、人でも脳の大きさには個人差があり、脳の容量だけでは説明がつかないこともあるので、まだまだ、難しいいのでしょう。
個人的には、機械が動き続けるには図面をもとに作った機械だけでは難しく潤滑油等が必要となるので、たぶん、構造的な解明だけでは難しいのではと思っています。
この研究の意義は、以前から言われていた、ヒトの特徴の進化には遺伝子そのものよりもその制御領域(エンハンサー)が関わっている、という仮説を(ほぼ初めて)しっかりと立証したことにあります。ちなみに、著者の一人Greg Wrayはこのようなエンハンサーによってもたらされる進化の第一人者です。