インドネシアのモルッカ諸島の水深144mで「インドネシア・シーラカンス」の直接撮影に成功

調査が行われたのは、インドネシアのモルッカ諸島北部沖。
この地域は、スラウェシ島とニューギニア島の中間に位置し、これまでインドネシア・シーラカンスが確認されたことは一度もありませんでした。
フランスのUnseen Expeditionsは、2020年からこの地域でおおよそ30〜150mの海域を対象とした継続調査を行ってきました。
そして2024年10月、調査ダイバーは深さ152mに到達したのち、浮上を開始。
144m地点で偶然シーラカンスの姿を捉えます。

午前9時、複雑な火山性地形の岩の上に、体長約1.1メートルのシーラカンスが静かにホバリングしていたのです。
その魚体は、洞窟の中ではなく開けた岩礁の上に現れており、「日中は暗所に潜む」というこれまでの定説とは異なる行動を見せていました。
ダイバーたちはその特徴的な白斑模様を高解像度で撮影しています。

そして翌日に再び同じ場所に戻ると、その場所から数メートル上の地点で、同じ個体を発見することができました。
この成果により、モルッカ諸島にもインドネシア・シーラカンスが生息していること(これまで知られていなかった地域)、個体行動における柔軟性(日中に開けた場所に姿を見せる)を知ることができました。
研究者らは、「この個体1匹だけがこの広大な海域に生息しているとは考えにくい」と述べており、新たな個体群の存在、あるいは未知の系統が隠れている可能性も視野に入れて調査を進めています。
今後は、これらの魚の生息環境を保護しながら、より深い理解を目指す研究が進められることが期待されます。

観光や経済活動による圧力からこの貴重な生態系を守るためには、現地社会と連携した保全政策の推進も求められるでしょう。
4億年もの間、ひっそりと深海に生きてきたシーラカンス。
その姿を人間が自らの目で、自然のままに捉えることができた今回の発見は、科学にとっても人類にとっても大きな前進です。
同時に、それは「知られざる世界にはまだこんなにも驚きが残されている」という希望の証でもあります。
未来の探査がどんな生命と出会わせてくれるのか、今後の報告も楽しみです。