ティラノサウルスはどう進化してきたのか?
ティラノサウルス科の巨大な捕食者たちが活躍したのは、恐竜時代の最後にあたる白亜紀末のことです。
北アメリカではティラノサウルス・レックスが、アジアではタルボサウルス・バタールが、 それぞれ陸上生態系の頂点として君臨していました。
これらの巨大捕食者たちは「エウティラノサウルス類」と呼ばれ、体重は1トンを超え、分厚く頑丈な頭骨で、強烈な咬み力を持つなど、驚異的な進化を遂げた大型ティラノサウルス類のグループでした。
エウティラノサウルス類は、白亜紀最後の1500万年間(約8600万~6600万年前)に繁栄しましたが、では彼らはどこからやってきたのでしょうか。
そのルーツは、体重500キロ未満の通称「中間型ティラノサウルス類(mid-grade tyrannosauroids)」にあるとされます。
このグループは、ジュラ紀〜白亜紀前期にかけて存在した「初期型ティラノサウルス類」と、白亜紀後期の「エウティラノサウルス類」の間をつなぐ“進化の中継点”とされています。
しかしながら、中間型ティラノサウルス類は化石記録に乏しく、どのような進化プロセスを辿っていたのかがよくわかっておらず、長らく「進化の空白地帯」とされてきました。

そんな中、今回新たに注目されたのが、1970年代にモンゴルで発掘されたいくつかの骨格標本でした。
研究チームは博物館の倉庫で眠っていたこれらの化石を改めて詳しく分析。
すると驚くべきことに、既存のどの恐竜にも当てはまらない、まったく新しいタイプのティラノサウルス類が見つかったのです。
体の大きさは中型、形もユニークで、これまで見たことのない特徴をいくつも備えていました。