暗黒物質説は宇宙像を書き換えるか

この挑戦的な暗黒物質起源説は、超高エネルギー宇宙粒子の謎に新たな光を当てるものです。
もし本当に暗黒物質が地球内部で“発光”し、それをニュートリノ望遠鏡が捉えたのだとすれば、私たちはニュートリノ天文学の枠を超えて暗黒物質そのものを間接検出したことになります。
暗黒物質は通常、光学望遠鏡では見えず重力などでしか存在を示しませんが、この研究が示すように高感度の素粒子検出器が暗黒物質の痕跡を捉える日が来たのかもしれません。
もっとも、このシナリオはあくまで現時点では仮説であり、確定にはさらなる証拠が必要です。
他の研究者からは、暗黒物質の崩壊によって直接ニュートリノを放出し今回の事象を説明するモデルも提案されています。
こちらのモデルでは質量約440 PeVの暗黒物質が自然崩壊してニュートリノを放つシナリオで、KM3NeTの観測とアイスキューブ未検出を両立させられる可能性が示唆されています。
暗黒物質以外にも、ニュートリノが通常とは異なる相互作用を示す「ニュートリノNSI仮説」など複数の見解があり、科学界では活発な議論が続いています。
「高エネルギー粒子」の正体が何であれ、その観測自体が我々の宇宙観を拡張するマイルストーンであることは間違いありません。
KM3NeTスポークスパーソンのパスカル・コイル氏はこの発見について「KM3NeTはこれまでの観測で届かなかった極限のエネルギー領域に踏み込み始めました。この数百PeV級ニュートリノの初検出は、ニュートリノ天文学の新たな章を開き、宇宙を観測する新たな窓をもたらします」と述べています。
超高エネルギーの宇宙粒子は、宇宙線の起源や粒子加速のメカニズムといった長年の謎に答えをもたらす可能性があります。
今回提案された暗黒物質シナリオも、そうした謎解きの一端を担う大胆な試みと言えるでしょう。
今後、アイスキューブやKM3NeTでさらなる超高エネルギー事象が見つかれば、この仮説の検証が進むはずです。
また、研究チームは暗黒物質起源であればニュートリノ検出器で観測される粒子の種類(フレーバー比)に独特の偏りが現れる可能性にも言及しています。
加えて、地上の暗黒物質直接検出実験や次世代の加速器実験でも関連する手がかりが得られるかもしれません。
宇宙の暗黒物質が極限のエネルギーで飛び交い、それが地球で閃光を生む——まるでSFのようなシナリオですが、科学者たちは慎重にその可能性を探っています。
「KM3-230213Aイベントは暗黒物質だったかもしれない」というこの仮説が真実かどうか、今後の観測と研究の進展に期待が高まります。
こういうのって超新星爆発の残骸なんじゃないですかね?
例えば、ベラ・ジュニア(≒700光年離れ)爆発が1,325年頃前だから、その頃の重たい粒子が飛んできたとか。