足跡のスピード測定は間違い!?恐竜の「歩いてただけ」が「全力疾走」に見えていた?
実験の結果は驚くべきものでした。
ホロホロチョウが「時速1km(秒速0.28m)」というゆったりとしたスピードで泥の上を移動していた際に観測された例では、その足跡をアレクサンダー式で解析すると、時速4.7km(秒速1.3m)と算出されたのです。
これはなんと、実際のスピードの4.7倍。
このズレを大型恐竜にスケーリングすると、時速4kmで歩いていた恐竜が、足跡解析では時速19kmで走っていたと推定されることになります。

さらに注目すべきは、同じ歩幅であってもスピードが異なる場合があったという点です。
ホロホロチョウが連続して踏んだ足跡のうち、歩幅が0.37mのものでも、全く異なるスピードで前進するケースがありました。
泥のような「柔らかく変形しやすい地面」では足が沈んでしまい、抜くときに引っ張られるため、自然と歩幅が変化するためだと考えられます。
これらの影響が、恐竜の足跡に残された情報に「スピードの錯覚」を生じさせていたのです。
研究チームは、「恐竜の化石足跡も同様の誤差を含んでいる可能性が非常に高い」と警告しています。
つまり、これまで足跡を根拠に「走っていた」「獲物を追っていた」とされてきた恐竜の多くが、実はただ「歩いていた」だけかもしれないというのです。
これは、過去に行われたスピードや行動の再構築を、根本から見直す必要があることを示唆しています。
今後、恐竜のスピードや行動をより正確に理解するためには、柔らかい地面での動物の動きをもっと多く検証していく必要があります。
そして、計算式だけに頼らず、実験と観察による検証を重ねていくことが不可欠です。
この研究は、恐竜のダイナミックなイメージに新たな視点を投げかけてくれました。
今後も科学は、恐竜の姿をいっそうリアルに映し出していくことでしょう。
大きい体でゆっくり動いているのもそれはそれで威圧感たっぷりでいいと思いますけどね。
まあ、逃げる小型恐竜もゆっくり歩いて逃げていたのだとすると少し微妙になってきますが。