顔に見える仕組みを利用する新しいデザイン戦略

今回の研究では、「顔のように見える物」が私たちの注意をどう引きつけるのか、その仕組みを本物の顔と直接比べて調べました。
本物の顔でも、顔のように見える物でも、私たちは自然とその「見ている方向」に注意を向けてしまいます。
ただし、どちらも同じように見えるだけで、実は脳の中で動いている仕組みは違っていたのです。
本物の顔では、目の向きといった細かい部分(局所的な情報)が、顔のように見える物では、目と口のようなパーツの並び方(全体的な構造)が、それぞれ注意の方向を決めていることがわかりました。
たとえば、誰かが横目で何かを見ていれば、私たちもついその方向を見てしまいますよね。
それと同じように、顔に見える模様がこちらを向いているように見えれば、つい目が引きつけられてしまうのです。
こうした脳の反応には、進化の中で「危険を見逃さないようにする」しくみが関わっているかもしれませんが、残念ながら今回の研究ではその点までは深く調べていません。
発見されたことは、科学的におもしろいだけでなく、身近な生活にも役立つかもしれません。
研究チームは、この「顔らしさの力」が広告やデザインの分野にも使えると考えています。
たとえば、製品のパッケージやキャラクター、車のフロントのデザインなどに顔のような配置を取り入れると、見る人の無意識の注意を引きつけて、より強く印象づける効果が期待できるのです。
このような可能性については、実際の論文の中でも言及されています。
私たちも実際、家電製品が「なんだか可愛い顔」に見えたり、ポスターの大きな目に思わず目がいったりしたことがあるかもしれません。
そうした「顔のように見える物体」がもつ引力をうまく活かせば、人々の注目を集める新しい方法として、社会で広く使えるかもしれません。
とはいえ、本物の「横目」が持つ力もあなどれません。
人の横目には、見るだけで本能的に「何かある」と反応してしまうような強さがあります。
今後の研究では、本物の視線と顔に見える物体の効果を組み合わせて、もっと効果的なデザインやユーザーインタフェースの開発ができるかもしれません。
この研究の成果は、人間の知覚のしくみを理解する手がかりになるだけでなく、私たちが日常の中で感じている「顔に見える不思議な感覚」に、科学的な説明を与えてくれたのです。
次に、壁の模様やコンセントの穴が「こっちを見てる」と感じたときには、あなたの脳がそのとき何をしているのか、ぜひ思い出してみてください。
急にコラムとか言って妄想始まってびっくりしちゃった