孤独が生む「自己評価のゆがみ」

私たちは通常、「孤独」という言葉を「ひとりぼっちの状態」として想像しますが、研究が示す孤独はもっと複雑です。
それは周囲に人がいるかどうかではなく、「人間関係の質や量が自分にとって不足している」と感じる主観的な感覚を指します。
つまり、家族や友人に囲まれていても、その関わりが心地よくないと感じれば、孤独感は募ってしまうのです。
孤独は心の健康だけでなく、体の健康にも悪影響を及ぼします。
抑うつや不安、心血管疾患、さらには寿命の短縮とも関連があることが報告されています。
その背景には、孤独によって高まる「社会的な脅威への感受性」があります。
孤独な人は、人間関係の中で拒絶や対立のサインを敏感に察知する傾向が強くなります。
その結果、相手の何気ない言動を「自分を避けているのでは」と感じたり、対立を避けようとして距離を取ってしまったりします。
今回の研究が注目したのは、この「感受性の高まり」が自分自身の評価にも及ぶ点です。
チームが824名の男女(平均年齢50.4歳)を対象に調査した結果、孤独を感じる人ほど、自分の人間関係への貢献を低く見積もり、「支援はあまりできていない」「迷惑や負担をかけている」と感じやすいことが分かりました。
これは単なる謙遜や自己批判ではなく、行動そのものを制限してしまう危険な心理パターンです。
「どうせ自分は迷惑だから」と思えば、人との接点を避けるようになり、孤独がさらに深まる――まさに悪循環です。