ヴェロキラプトルといかに共存できたのか?
一見すると同じような体格を持つヴェロキラプトルとシュリ・ラパックスが、なぜ同じ環境で共存できたのでしょうか。
その答えは「役割分担」にあります。
ヴェロキラプトルは鋭い足のかぎ爪で素早く攻撃し、素早い小型獲物を仕留める戦法を取っていたと考えられます。
一方でシュリ・ラパックスは、強靭な腕と手を使って獲物を押さえ込み、強力な咬みつきでとどめを刺すという異なる戦法を取っていたと推定されます。
つまり、両者は狙う獲物の種類や狩猟方法を分け合うことで、同じ地域で生態的に棲み分けていたのです。
このような違いは、ドロマエオサウルス類(ラプトル類)の多様性を示す好例です。
同じ砂漠に複数のラプトルが生息していた事実は、彼らが単なる「類似した恐竜」ではなく、それぞれが異なる獲物や環境に適応した存在であったことを物語っています。
さらにシュリ・ラパックスの尾は、骨化した腱によって硬直化しており、俊敏な動きを維持するのに役立っていたとされます。
羽毛の痕跡は残っていませんが、近縁の種の証拠から、七面鳥のような羽毛をまとっていた可能性が高いと研究者たちは推測しています。
つまり見た目は羽毛に覆われた“猛禽類サイズ”の恐竜でありながら、手には巨大な「カミソリ」を備えた存在だったのです。
今回の研究は、ヴェロキラプトル類の知られざる多様性を浮かび上がらせました。
小型獲物を俊敏に狩るヴェロキラプトルと、大型の獲物を豪腕で押さえ込むシュリ・ラパックス。
両者は同じ砂漠に生きながらも、異なる戦略で獲物を狙っていたのです。
「2倍の爪」を持つ恐竜の発見は、ラプトルたちの生き残り戦略を新たな視点から理解するきっかけを与えてくれます。
シュリ・ラパックスの存在は、私たちが思い描くラプトルのイメージをさらに豊かにしてくれる発見なのです。