脂肪を捉えて排出するマイクロビーズを開発
肥満は、世界で8億人以上が悩む現代病です。
その要因にはさまざまなものがありますが、特に高脂肪食によるカロリー過剰摂取は重要なリスクのひとつとされています。
これまで肥満治療には、生活習慣の改善、薬物療法(たとえばオルリスタットやセマグルチド)、外科手術などが用いられてきましたが、それぞれに副作用やコスト、心理的ハードルが存在していました。
今回の研究が注目されたのは、それらに代わる副作用のない物理的アプローチである点にあります。
研究チームが開発したのは、PmFLマイクロビーズ(Polyphenol-mediated Fat-Locking microbeads)と呼ばれる食用カプセルです。
このビーズの構造は非常にユニークです。
まず、緑茶由来のポリフェノールと、ビタミンEをナノスケールで組み合わせ、脂肪と結合する安定したナノ構造を形成します。
これをさらに、アルギン酸(海藻由来の食物繊維)でできたマイクロサイズの多孔質カプセルに格納し、腸まで届く耐酸性の”食べられる粒”として完成させました。
このビーズが体内に入ると、まず胃では収縮して酸に耐える構造を保ちます。
次に腸に到達すると、pHの変化によりアルギン酸コーティングが膨張し、表面積が拡大します。
その結果、食事由来の脂肪滴を効率よく吸着できるようになります。
そして摂取した脂肪は、ビーズ内部のナノ構造に封じ込められていくのです。
最終的には、これらの脂肪が体内に吸収されることなく、便と一緒に安全に排出されます。
このように、PmFLマイクロビーズは薬理作用ではなく、物理・化学的な吸着作用によって脂肪の吸収をブロックする新しいアプローチです。
しかもこのビーズは、食後に飲むだけで効果を発揮します。
では,実験ではどれほどの効果があったのでしょうか。