右利きの人は66%の確立で左から3番目を選んだ
研究チームはまず、人の「自由な選択」がどれほど無意識に影響されるのかを明確に調べるため、特別な心理実験を設計しました。
実験には、イギリスのロンドンにあるゴールドスミス大学(Goldsmiths, University of London)と中国の清華大学が協力し、計60人の参加者を集めました。
研究者たちはまず、机の上に4枚のカードを横一列に並べました。
参加者には「この中から好きなカードを1枚、自由に選んで前に押し出してください」とだけ伝えました。
この指示は、参加者に「選択の自由」を感じさせるための重要なポイントでした。
なぜなら、もし研究者がカードを強く勧めたり、誘導するような言葉を使ったりすれば、参加者がそれに気づき、純粋な「無意識による選択」のデータが取れなくなってしまうからです。
実験の結果、非常に興味深い傾向が現れました。参加者のうち66%、つまり60人中約40人もの人が、なぜか左から3番目のカードを選んだのです。
ただし、この傾向は「右利き」の人に限られていました。
左利きあるいは左手を使った被験者は、左から2番目のカードを引く傾向が高かったようです。
ゴールドスミス・カレッジの心理学者で研究主任のグスタフ・クーン(Gustav Kuhn)氏は、この結果に受けて「多くの人は利き手に近い場所を選びやすいこと、それから端っこを避ける心理があることを示唆している」と指摘します。
これは、人が無意識のうちに、自分にとって手を伸ばしやすい位置や自然な動作をしやすい場所にあるカードを選ぶ傾向があることを示しているのです。
しかし、最も興味深いのは、こうした明らかな偏りがあるにもかかわらず、参加者のほとんどが自分の選択は「完全に自由だった」と感じていた点です。
実験後のインタビューでも、「なぜそのカードを選んだのですか?」という質問に対し、多くの人が「特に理由はなく、自分で自由に選びました」と答えていました。
つまり、実際には無意識に誘導された選択であるにもかかわらず、自分ではまったくその影響に気づいていないということが明らかになったのです。
この結果は、人間の「自由な選択」の感覚が、実は見えない心理的な仕掛けにとても弱いことを示しています。