ウェッブ望遠鏡がとらえた大気の手がかり

そこで登場したのが、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)です。
研究チームは、JWSTに搭載された赤外線観測装置「NIRSpec」を用い、TRAPPIST-1eが恒星の前を通過する瞬間の光を観測しました。
もし惑星に大気があるなら、恒星の光の一部が大気中のガス分子によって吸収され、スペクトル(光の波長のパターン)に特徴的な暗い線として表れます。
観測を繰り返すことで、その大気の有無や成分を探ることができます。
今回解析されたのは4回分の通過データです。
結果は「決定的」とは言えないものの、いくつかの重要な示唆を与えました。
まず、TRAPPIST-1eが形成初期に持っていた「一次大気(主に水素やヘリウム)」は、恒星からの強烈な放射線によってすでに失われている可能性が高いとされました。
これは予想通りの結果です。
次に問題となるのが「二次大気」の存在です。
地球もそうであったように、一次大気を失った後、火山活動などによって二酸化炭素や窒素といった重いガスからなる新たな大気を再形成することがあります。
研究者たちは、TRAPPIST-1eにこの二次大気が存在するかどうかを探りました。
観測結果は、金星のように二酸化炭素が非常に濃い大気や、火星のように希薄な二酸化炭素大気ではない可能性を示しています。
また、水素が豊富な大気モデルも支持されませんでした。
その一方で、窒素を主体とし、少量の二酸化炭素やメタンを含む大気というシナリオと一致する兆候が見られたのです。
窒素主体の大気といえば、まさに地球の特徴そのものです。
地球の大気の約78%は窒素で占められています。
今回の結果はまだ曖昧で、追加の観測が必要ですが、もし確認されればTRAPPIST-1eはこれまでで最も「地球に似た」系外惑星となるかもしれません。
さらに、もし大気が存在し液体の水を保持しているなら、TRAPPIST-1eの表面には地球の海のような環境が広がっている可能性もあります。