世界最古のミイラを発見!
今回の発見の舞台となったのは、中国南部やベトナム北部を中心とした東南アジア一帯の洞窟や遺跡です。
国際研究チームは、ここで出土したおよそ1万2000年前から4000年前にかけての多数の埋葬人骨を調査しました。
その多くは「しゃがんだ姿勢」や「うずくまった姿勢」で、遺体はきつく縛られ、とても小さく折りたたまれていました。
当初、研究者たちはこの異様な埋葬姿勢の理由がわかりませんでした。
自然に遺体が腐敗しただけでは、このような極端なポーズにはなりません。
さらに遺骨の一部には焦げた痕や切断痕が見つかり、「何か特別な処理が行われていたのでは?」という疑問が生まれました。
そこで注目されたのが「火」と「煙」です。
チームは、遺骨のごく小さな断片を分析し、熱や煙による化学変化を詳細に調べました。
その結果、遺骨の約8割以上で、火や煙による“燻製”の痕跡が発見されたのです。
※ こちらはインドネシア・パプアの民家に保管されている燻製ミイラの例。(2019年1月撮影)
しかも、その加熱は一部の骨(頭や四肢の端など)に集中し、全身が均一に焼かれているわけではありませんでした。
この発見は、ただの焼却や自然腐敗とは明らかに異なる「人為的なミイラ化」――とくに「煙による燻製ミイラ化」――が、東南アジアの狩猟採集民によって1万年以上も前から行われていたことを示しています。