マイクロプラスチックが人間の骨から検出される。動物実験では悪影響を確認
このレビューから分かったことは、マイクロプラスチックが骨や骨髄の内部にまで到達し、細胞レベルで多様な影響を及ぼしている可能性があるということです。
まず、培養細胞を用いた実験では、骨を作る細胞や骨髄の幹細胞がマイクロプラスチックにさらされることで、細胞の生存率が低下し、老化が促進されることが報告されています。
また、細胞が専門的な役割を持つための分化というプロセスがうまく進まなくなったり、遺伝子の働きが変化し、活性酸素が増加して炎症反応が引き起こされたりする現象も観察されています。
さらに骨を壊す細胞である破骨細胞の形成や働きにも変化が生じ、骨の再生バランスが乱れる可能性が懸念されています。
動物実験でも、マウスなどにマイクロプラスチックを与えると、骨や骨髄の中で粒子が検出されるだけでなく、骨の成長が阻害されたり、骨の内部構造に乱れが生じたり、骨の強度が低下する例が報告されています。
さらに、腸内細菌のバランスが崩れたり、白血球をはじめとした血液を作る骨髄の機能にも悪影響が及ぶケースも明らかになっています。
マイクロプラスチックがここまで深部に届く理由としては、やはり、その粒子が非常に小さいことが挙げられます。
特にナノプラスチックと呼ばれる100万分の1ミリほどの極小粒子は、体の防御バリアをもすり抜けてしまう可能性があるのです。
食べ物や飲み物、空気から体内に入ったこれらの粒子が、血液の流れに乗って全身を巡り、骨や骨髄といった体の奥深くにまで運ばれる可能性があるのです。
では、こうした現象は、人間にも当てはまるのでしょうか。
ヒトを対象とした研究では、マイクロプラスチックが骨組織で検出されました。
現時点では、細胞実験や動物実験と同様の影響が人間にも及ぶか分かっていません。
とはいえ、骨の細胞や骨髄の働きが妨げられることで、骨の成長障害や骨粗しょう症、骨折のリスク上昇につながる可能性が指摘されています。
関係性は不明ですが、実際に骨粗しょう症の患者数は世界的に増加しており、加齢や生活習慣、飲酒など従来のリスクに加えて、マイクロプラスチックの蓄積という新たな環境リスクが注目されつつあります。
これからはヒトの骨組織での定量的な調査や、長期的な疫学研究を進めていくことが重要でしょう。
マイクロプラスチックの体内への取り込みを減らすためには、飲み水のろ過やプラスチック製品の使用を減らすこと、リサイクルを徹底することなど、個人と社会が連携した対策が求められます。
今回の研究は、現代の環境汚染が私たちの骨という根幹にまで及んでいる可能性を示しました。
骨の健康を守るためには、マイクロプラスチックの影響を知り、暴露を減らす取り組みがより重要になると考えられます。