深いため息が「肺の表面」を守る?
ふだん意識せずにしている呼吸ですが、私たちの肺の内部では絶えず繊細なバランス調整が行われています。
肺の表面には、特殊な液体が薄い膜となって広がっており、呼吸のたびに肺胞(空気を交換する小さな袋)をしなやかに膨らませたり縮ませたりする手助けをしています。
この「液体の薄い膜」は、まるで自転車のオイルのように、肺胞同士がくっついてつぶれてしまわないように滑らかな動きを保ち、肺がスムーズに働けるよう支えているのです。
特に未熟児や重い呼吸障害の患者さんでは、この液体が足りないことで肺がうまく広がらず、命にかかわるケースもあります。
現代医療では動物由来の「液体の薄い膜」を人工的に補うことで、こうした症状の改善が図られています。
しかし大人の場合、「液体の薄い膜」を外部から補っても十分な効果は得られません。
なぜなら、この液体の働きには単なる「表面張力の低減」だけではなく、「力学的なストレス」や「液体の層構造」など、より複雑なメカニズムが関わっているからです。
そこで研究チームは、「液体の薄い膜」が肺の表面でどのように振る舞うのかを詳しく調べました。
その結果、呼吸運動による「液体の伸び縮み」が、肺の表面の状態に決定的な影響を与えていることが分かったのです。