なぜマスターベーションの回数が増えているのか?

研究チームは今回、マスターベーション、つまりいわゆる「セルフ行為」が、この約10年ほどで本当に増えたのかを調べるため、大規模なデータを分析しました。
使用されたのは1999〜2001年(Natsal-2)と2010〜2012年(Natsal-3)に実施されたイギリスの全国調査です。
これはイギリスの全国的な調査で、性に関するさまざまな質問をランダムに選ばれた一般市民に尋ねたものです。
調査方法は概ね同様で、「この1ヶ月の間にマスターベーションをしましたか?」といった質問を参加者がコンピュータ上で自分で回答しています。一部の項目は測り方に差がある可能性があります。
このため、回答者は周囲を気にすることなく、正直な回答をしやすいよう配慮されています。
まず調査対象として、1999〜2001年では16歳〜44歳の男女11,161人、2010〜2012年では同じ年齢範囲の男女9,902人のデータを比較しました。
また2010〜2012年の調査では、年齢の範囲を広げて16歳〜74歳までの男女15,162人にも調査を行い、年齢やパートナーとの関係状況、宗教や健康状態などの個人の特徴が、セルフ行為をする頻度とどのように関係しているかも調べました。
では、実際の結果を見てみましょう。
まず、この10年ほどの間に「セルフ行為」を行う人は、男女とも明らかに増えていました。
調査によると、16〜44歳の女性では、過去1ヶ月の間にセルフ行為をしたと答えた人の割合が37.0%から40.3%に増えました。
男性の場合はさらに高く、73.4%から77.5%に増加しています。
特に注目したいのは、「若い世代ほどこの増加傾向が強い」ということです。
16〜24歳の若い男性では、10年前に比べてセルフ行為をした人が73.2%から82.6%へと、9.4ポイントも増えています。
実にこの年齢の男性の5人に4人以上が、過去1ヶ月の間にセルフ行為をしたことになります。
研究チームは、この不思議な変化の背景として「インターネット環境とスマートフォンの普及」という要素を挙げています。
2000年代に入ると、インターネットが急速に普及し、スマートフォンの登場により動画やアダルトコンテンツなどをいつでもどこでも見ることが可能になりました。
要は、「セルフ行為に最適な環境が手のひらの中に収まった」とも言えるわけです。
実際、研究者たちは「ポルノの主な利用目的がセルフ行為であることを考えると、ポルノへのアクセスが容易になったことが、セルフ行為の頻度増加を後押しした可能性があります」と述べています。
また女性の場合、セルフ行為への社会的な偏見がこの10年で弱まったことが、より多くの女性がセルフ行為を試すきっかけになった可能性もあります。