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Credit: canva
medical

3歳児が実験皿で培養していた「淋菌」を誤食してしまった事件

2025.10.23 12:00:20 Thursday

1984年、医学雑誌『The New England Journal of Medicine』に衝撃的な症例報告が掲載されました。

場所はアメリカ・テキサス州。

3歳の小さな男の子が、大人の性感染症の原因菌として知られる「淋菌(学名:Neisseria gonorrhoeae)」を食べてしまったのです。

一体なぜこのような事故が起こってしまったのでしょうか?

そして男の子は無事だったのでしょうか?

Diagnostic dilemma: A toddler accidently ate gonorrhea bacteria from a lab dish https://www.livescience.com/health/viruses-infections-disease/diagnostic-dilemma-a-toddler-accidently-ate-gonorrhea-bacteria-from-a-lab-dish
Nonsexual Transmission of Gonorrhea to a Child https://doi.org/10.1056/NEJM198408163110716

実験皿の中身を「おやつ」と勘違い

事件のきっかけは、母親の仕事でした。

男児の母親は、微生物検査技師で、医療現場から回収した検体入りの培養皿(シャーレ)を運ぶのが日常業務のひとつでした。

その日、母親は3歳の息子を車に乗せたまま、仕事帰りにスーパーで買い物を済ませ、自宅に戻りました。

母親が荷物を家に運び込む間、ほんの数分だけ息子を車内に残しました。

ところがそのわずかな時間に、息子は後部座席に置かれていた培養皿に興味を示し、蓋を開けて中身のほとんどを食べてしまったのです。

その培養皿に入っていたのは「チョコレート寒天」と呼ばれる茶色い培地。

実はこれ、赤血球を壊してつくる栄養たっぷりの「細菌のためのお菓子」のようなもので、色も名前も子どもにはおいしそうに見えたのでしょう。

しかしもちろん本物のチョコレートではなく、中には淋菌がたっぷりと培養されていました。

母親が車に戻ったときにはすでに手遅れ。

息子はほとんど全部を食べ終えていました。

驚いた母親はすぐにかかりつけ医へ。培養皿の残りから淋菌が検出され、息子の喉からの感染が疑われることになりました。

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