AIだけの世界でも「空気」や「同調圧力」や「炎上」が生まれ得る
AIだけの世界でも「空気」や「同調圧力」や「炎上」が生まれ得る / Credit:Canva
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AIだけの世界でも「空気」や「同調圧力」や「炎上」が生まれ得る

2025.11.24 21:00:42 Monday

イギリスのシティ・セントジョージズ・ロンドン大学(City St George’s, University of London)で行われた研究によって、AIだけを何十体も集めた「仮想教室」の中で、人間社会さながらの『空気』(場の雰囲気)や『同調圧力』のようなものがみられたことが示されました。

さらに、たった数%の「絶対に考えを変えないAI」を混ぜると、その少数派がある割合を超えた瞬間に教室全体の合言葉が一斉に塗り替わる、まるでSNSの炎上や社会運動が一気に広がるときのような「転覆の瞬間」が再現されました。

これは少数の活動家が社会全体の潮流を大きく変えるという人間社会で起こる現象にも似ています。

そしてこれらの結果は、大規模言語モデル(LLM:大量の文章を学習したAI)が、単なるおしゃべりマシンではなく、相互作用の中でAI社会のようなものをつくりうる可能性があることを示唆しています。

もしAI同士がこうした見えないルールや空気を自分たちで作り始めるのだとしたら、私たちはこれからどのようにAI社会と付き合っていけばよいのでしょうか?

研究内容の詳細は『Science Advances』にて発表されました。

Emergent social conventions and collective bias in LLM populations https://doi.org/10.1126/sciadv.adu9368

AIだけでも空気を読むような社会的行いがみられるのか?

AIだけでも空気を読むような社会的行いがみられるのか?
AIだけでも空気を読むような社会的行いがみられるのか? / Credit:Canva

クラスで、誰が決めたわけでもないのに変なあだ名や謎ルールが定着していた、という経験がある方は多いと思います。

気がつくと全員がその言葉を使い、従わないと「空気が読めていない」ように感じてしまう。

こうした見えないルールが、社会的慣習(social convention:みんなが自然に従う決まりごと)です。

社会学やネットワーク科学ではこうした現象はよく知られており、人間を集めた実験では、新しい言葉が少しずつ合意されていき、最終的にみんなが同じラベルを使うようになることが確かめられています。

一方で、近年のAI研究では、LLMを「人間の代わりに答えてくれる代理人」として扱う研究が増えてきました。

しかし、多くの研究はLLMを一体ずつテストし、「このモデルは公平か」「このモデルは偏見が少ないか」といった評価にとどまっています。

研究代表のひとりであるAriel Ashery氏は、これまでの研究はLLMを一体ずつ切り離して評価してきたが、現実のAIシステムではたくさんのエージェントが互いに影響し合っていると述べています。

では、LLMを大量に並べて「AIだけの社会」をつくり、互いに会話させたらどうなるのでしょうか。

人間の研究で見られたような、慣習・集団バイアス(collective bias:集団としての偏り)・少数派によるルール転換は、AI社会にも立ち上がるのでしょうか。

それとも、AIは人間と違って、いつまでもバラバラなままなのでしょうか。

今回の研究は、この素朴でありながら根本的な問いに真正面から挑んだものです。

次ページ2%の「活動家型AI」のせいでAI社会全体が変わる

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