なぜ腱の振動が有効なのか?

なぜ腱の振動が有効なのか?
著者たちは、筋紡錘からの信号がカギだと考えています。
筋紡錘は、筋肉の長さや伸び縮みの速さを測る「長さセンサー」で、今どれくらい力がかかっているかを脊髄や脳に報告し続けています。
過去の実験ではアキレス腱や膝蓋腱(しつがいけん)を数分〜十数分にわたって細かく振動させると、腱反射が抑えられ、筋紡錘からの信号が弱まることが報告されています。
そのため研究者たちは、腱を十分間も振動させ続けると、同じ場所が何度も刺激されるため、「しんどさ信号」の量も減る可能性があると考えています。
精密な物理センサーを測定前に乱雑に振るうと正確な測定ができなくなるのと似た現象が起きたと言えるでしょう。
そして脳の側ではセンサー側の信号が少なくなれば、「思ったほどきつくない」と評価され、そのぶん運動指令を上乗せしてしまうことになったのだと考えられます。
これは、「努力そのもの」をどうにかするのではなく、「努力の感じ方をチューニングする」という、新しいアプローチの現実味を示すデータだと言えます。
ただ全ての運動においてこの効果が適応されるかは不明です。
研究代表のベンジャミン・パジェー教授は「この効果はまだ3分間の短いサイクリング運動でしか確かめられておらず、マラソンのような長時間運動ではテストされていません」と慎重に述べています。
また、努力感が軽く感じられるということは、逆に言えばオーバーワークやけがのリスクも高める可能性があります。
医療やフィットネスの現場で使うには、安全性と長期的な影響について慎重な検証が必要です。
それでも、この成果から見えてくる未来はなかなか魅力的です。
多くの人がつまずくのは、「最初の数分がきつすぎて、そもそも続ける気になれない」というところです。
もし今後の研究で安全性が確認され、ウォームアップのあいだに軽く腱を振動させることで、「同じつもりの努力」でほんの少しだけ多く動けるデバイスが開発されれば、運動習慣の“最初の壁”を下げる力になり得ます。
もしかしたら未来の世界では、ジムやリハビリ施設の片隅には「腱の振動装置」が当然のように置かれているかもしれません。
























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