ポジティブ思考の落とし穴と、より有効な方法とは?
ポジティブな言葉に害はないように思えますが、注意すべき点もあります。
一つは「トキシック・ポジティビティ(有害なポジティブさ)」です。
人は不完全で、世界はしばしば理不尽です。それを無理に否定し、「前向きに考えなければ」と自分に強いることは、つらい感情を抑圧することにつながります。
苦しいときに「考え方を変えればいい」と思い込み、それができない自分を責めると、かえって孤立し、助けを求めにくくなる可能性があります。
もう一つは、短期的な快感の追求です。
ポジティブな言葉を繰り返すと、快楽や報酬に関わる神経伝達物質ドーパミンが分泌され、一時的に気分が高揚することがあります。
しかし常に「いい気分」を追い求めることは現実的ではありません。刺激を求め続ける循環に陥る危険もあります。
さらに、危険な状況での過度な前向き思考も問題です。
例えば、虐待的な関係にある場合、「私なら乗り越えられる」と言い続けることで、危険のサインを見逃してしまうことがあります。直感を打ち消してしまう可能性もあるのです。
では、何が有効なのでしょうか。
近年の研究は、「どれほどポジティブか」よりも「どのように自分に語りかけるか」が重要である可能性を示しています。
一つは自己への思いやり(悲しみや苦しみへの共感)です。
「これはつらい」「誰でもこう感じる」と自分に語りかけることは、単なる前向きスローガンよりも心を支えます。
苦しみを認め、親しい友人に話すように自分を扱う姿勢が、回復力を高めるとされています。
もう一つは心理的距離をつくる方法です。
自分を三人称で呼び、「〇〇は今怒っている。でもこれまでも困難を乗り越えてきた」と語ることで、自分と感情の間に距離が生まれます。
この「非執着」の姿勢は、感情を観察し、衝動的に反応せずに済む助けになります。
魔法ではないが、使い方次第
「私なら大丈夫」という言葉は、魔法の呪文ではありません。すべての人、すべての状況に効く万能薬でもありません。
しかし、適切な状況で、柔軟に使うならば、確かに小さな支えにはなります。
大切なのは、「この考えは今の自分に役立っているか」と問い続けることです。
前向きな言葉を選ぶときも、現実を否定するのではなく、自分への理解と共感を込めることが重要です。
無理に強くなるのではなく、弱さを認める勇気を持つこと。それこそが、ほんとうの意味で「私なら大丈夫」と言える土台なのかもしれません。



























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