悪に加担させるのは「圧力」と「沈黙」
では、なぜ人々は行為をやめなかったのでしょうか。
研究者たちは、その原因を「環境の変化」に見出しました。
ミルグラム実験では、参加者が電気ショックを与えるのをためらうと、実験者は次のように段階的な指示を出します。
「続けてください」
「実験には続行が必要です」
「続けることは不可欠です」
「あなたには他に選択肢はありません」
このように、前進する方向には強い圧力がかけられていました。
一方で、奇妙なことに、参加者が手順を破っても実験者は何も言いませんでした。
訂正もしなければ、中断もしないのです。
つまり、
・「続けろ」という圧力は強くかかる
・しかし「実験の手順が正しいかどうか」は放置される
という状況が生まれていたのです。
この結果、実験は徐々に「科学的な目的」を失っていきます。
最初は記憶実験だったはずが、気づけばただ「人に苦痛を与える行為」だけが残る状態になっていたのです。
研究者たちはこれを「正当な暴力から不当な暴力への移行」と呼びます。
重要なのは、この変化がほとんど意識されないまま起きる点です。
参加者にとっては、突然「悪いことをしている」と感じる瞬間があるわけではありません。
むしろ、ただ流れの中で行動を続けている感覚に近いのです。
そしてもう一つ、非常に重要な発見があります。
電気ショックを与え続けた人たちは、冷酷な人間だったわけではありませんでした。
むしろ、協調性が高く、ルールを守ろうとする「まじめで良い人」ほど従いやすい傾向があったのです。
一方で途中でやめた人たちは、特別に勇敢だったわけではありません。
彼らはただ、「これはまだ意味があるのか?」という問いを持ち続けていました。
つまり、電気ショックを与え続けた人たちとの違いは、強さではなく「疑問を持って、考え続けたかどうか」だったのです。





























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