3Dプリントで作る「生きている発光材料」
チームはさらに、光る藻類を材料の中に組み込む実験を行いました。
使われたのは、天然由来のハイドロゲルです。
ハイドロゲルとは、水を多く含むゼリー状の材料で、生きた細胞を閉じ込める素材としても使われます。
チームはこのハイドロゲルの中にP. ルヌラを封入し、それを3Dプリンターでさまざまな形に成形しました。
作られた構造物には、丸みを帯びた不定形のものや、顕微鏡で見たP. ルヌラの姿にちなんだ三日月形のものが含まれていました。
そして、そこに酸性または塩基性の溶液を加えると、構造物全体が鮮やかなシアンブルーに光りました。
これは単なる「光る液体」ではありません。
藻類という生きた生物を材料に組み込み、形ある立体物として発光させた点が重要です。
いわば、電球や発光ダイオードとはまったく違う仕組みで光る、「生きているランプ」の原型と言えます。
しかも、酸性や塩基性の溶液は、少なくとも実験条件下では藻類をすぐに死なせるものではありませんでした。
ハイドロゲル内の藻類は数週間生き続け、酸性刺激を受けたサンプルでは、4週間後でも発光の明るさの75%を保っていたと報告されています。
この性質は、将来的な応用の幅を広げます。
たとえば、環境中の有害物質を検出すると光るバイオセンサーに藻類を組み込めるかもしれません。
水質の変化や毒性物質の存在に反応して光る材料が作れれば、目で見て異常を確認できる環境センサーになります。
また、電池を使わない小型の発光デバイス、自律型ロボット、深海や宇宙探査機器などへの応用も考えられています。
もちろん、今すぐ家庭の照明を藻類ランプに置き換えられるわけではありません。
実用化には、明るさ、発光時間、藻類の長期生存、刺激の制御、現実環境での安定性など、多くの課題が残っています。
外部の専門家からも、pH4の酸性環境は藻類にストレスを与える可能性があるため、長期利用には慎重な検証が必要だと指摘されています。
それでも、この研究の面白さは、照明を「電気で光る装置」としてだけでなく、「生き物の働きを利用する材料」として考え直した点にあります。
P. ルヌラは光合成を行うため、光や海水、二酸化炭素を利用して生きています。
従来の照明が電力を消費し、その発電過程で炭素排出につながる場合があるのに対し、このような生物発光材料は、光を生み出しながら炭素を取り込む可能性もあります。
夜の海に一瞬だけ現れる青いきらめきは、これまで「見るもの」でした。
しかし今回の研究は、その光を材料として閉じ込め、形を与え、必要な時に光らせる道を示しました。
未来のランプは、スイッチを入れる家電ではなく、静かに生きながら光る小さな生態系になるのかもしれません。





























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