ブラックホールの見方が、少しだけ変わった

ブラックホールというのは、長らく「宇宙の終点」のイメージで語られてきました。
なんでも吸い込んでしまう穴。
光さえ逃げられない場所。
すべての情報が消えてしまうように見える、宇宙の最果て。
けれど、今回の研究が示してくれたのは、それとは少し違う姿です。
ブラックホールは、宇宙にいきなり開いた「穴」ではないのかもしれません。
水と氷はどちらも同じH₂Oが、違う”相”として現れた姿でした。
それと同じように、なめらかな宇宙と、ブラックホールも、もしかしたら同じ”宇宙の組み立て”の異なる姿なのかもしれないのです。
(※より厳密には「2次相転移」と呼ばれる臨界現象との数理的な近さです(1995年の小池・原・足立らの研究でも示されています)。
そして、その二つの姿のちょうど切り替わり目に現れるのが、今回数式で記述された「時空結晶」── つまり「凍りかけの宇宙」だった、ということになります。
水が氷になる直前、分子と分子の配置関係が、そろそろ”これから凍る隊形”を組み始める瞬間があります。
ブラックホールが生まれる直前にも、それと同じように、物質と時空が手をつないで”これからブラックホールになる隊形”を組む瞬間があるのかもしれません。
今回の研究は、その一瞬を ── 30年以上、誰も紙の上に書き留められなかったその一瞬を ── ようやく数式という「設計図」として描き出すことに成功しました。
おそらく、これからの理論研究では、この設計図を手がかりに、宇宙の始まりにあったかもしれない極小ブラックホールの姿が、もう一度議論されていくことになりそうです。
そのささやかな相転移と、宇宙の最も極端な存在であるブラックホールの誕生が、根っこに似た数理構造を共有しているかもしれない ── そう思うと、なんだか身近な台所と、宇宙の彼方が、ちょっとだけ近く感じられるのではないでしょうか。
ブラックホールは、私たちが思っていたほど”よそ事”ではなかったのかもしれません。



















































