「数を見るのをやめる」のがヒントだった

研究者たちが最初にやったのは、ちょっと意外なことでした。
それは、「4ケタの数字を、4つすべて覚えるのをやめる」ことです。
「数の神秘に挑もうとしているのに、数字を忘れてどうするんだ?」と思うかもしれません。でも、ここにはちゃんと理由があります。
たとえば「8532」という数字を見たとき、私たちはふつう、これを「8と5と3と2の集まり」だと感じます。4つの数字それぞれに、それぞれの顔があるように思えるのです。
ところが研究者たちは、6174のような「終着点」がなぜ生まれるのかを突き止めるのに、4つの数字を全部追いかける必要はないことに気づきました。
本当に必要だったのは、たった2つの情報だけでした。
一つ目は、いちばん大きい数字(1位)と、いちばん小さい数字(4位)の差。
二つ目は、真ん中の2つの数字(2位と3位)の差。
8532で考えてみましょう。大きい順に並べると「8・5・3・2」ですから、
- いちばん大きい「8」と、いちばん小さい「2」の差は、8 − 2 = 6
- 真ん中の「5」と「3」の差は、5 − 3 = 2
この目線を通してみると「パンダ=白+黒」のように
「8532」=「1位と4位の差6」+「2位と3位の差2」
という圧縮した表現にできます。
一見するとこれは暴力的な情報の捨て方に見えるかもしれません。
4人の人物がいたのに、一人ひとりの名前も顔も、ばっさり忘れて、「いちばん背の高い人と低い人の身長差」と「真ん中の2人の身長差」だけを覚えるようなものです。
そんなに情報を捨てて、本当に大丈夫なのでしょうか。
ところが、これで十分だったのです。
試しに、「8532」とはまったく似ていない別の数字「7421」を見てみましょう。
これらはどちらも「1位と4位の差6」かつ「2位と3位の差2」という部分だけが同じでそれ以外に目立った共通点はありません。しかし
①大きい順に並べる
②小さい順に並べる
③大きいほうから小さいほうを引く
という操作を行うと、同じ6174になってしまうのです。
つまり「6174の魔法(カプレカの不思議)」を起こす操作が「感知」あるいは「関与」しているのは数字の「名前」ではなく数字同士の「距離」だけだったのです。
ただ重要なのは「6と2」が魔法の正体そのものではないという点です。
確かに「1位と4位の差6」かつ「2位と3位の差2」という条件を満たすゾロ目ではない4ケタならば、どんなものでも1度の操作で必ず6174に到達します。
しかしその「6と2」は「数字の差」という源泉から生じた二次的産物に過ぎません。
10進法の「6174の魔法」に目を奪われすぎると、6と2という条件こそが魔法の正体に思えてきます。けれど本当に重要なのは、その6と2を生み出した「数字同士の距離」という、もう一段奥にある考え方のほうなのです。
(※あえてファンタジーっぽく例えるならば「火の魔法の正体は火炎そのものではなく火炎を生じさせる裏で働くエーテル力学にある」という感じかもしれません。)
私たちはふだん、ものにはそれぞれ固有の正体があると考えます。
番号が違えば、別の数字。名前が違えば、別の人。
ところがこの数遊びの中では、「それが何であるか」よりも、「互いにどれだけ離れているか」のほうが、運命を決めていたのです。
そしてこの隠れている本当の正体のほうが重要という部分が、ここからさらに明らかになってきました。




















































