ゲームキャラの「出産シーン」をAIに数千回も書かせていた

新たな研究ではAIによる物語づくりに関する会話の80%以上を、上位わずか2%のユーザーが生み出していたことが示されました。
ごく少数の”常連”が、物語の割合を、常連の熱量のぶんだけ大きく膨らんでしまうのです。
そこで研究者たちが補正のために計算を行うと、少数の常連による”かさ増し”が消え、34%もあったはずの物語の割合が、わずか7.1%にまで急落しました。
(※100人が1件ずつ会話した場合、物語の出現頻度が約7件ぶんであるという意味です)
物語づくりという行為が、いかに一部の人に支えられていたかを示す数字と言えるでしょう。
さて、ここでいよいよ、あの「ナツキ出産を何千回も」の人物に戻りましょう。
この人は、2%の常連のなかでも、飛び抜けて多作な、いわば極北星のような存在です。
論文でもこの人物の存在についてかなりの誌面を割いて記述を行っています。
しかし自然な疑問が湧きます。
なぜ、かの人は同じ話をわずか数か月の間に何千回も書かせたのでしょうか?
そんなに気に入らなくて、何度もやり直しているのでしょうか?
その可能性もあります。ゲームでサイコロを振り直すように、望む展開が出るまで生成し直す。研究チームも、そうした振る舞いを確かに見つけています。
でも──と、研究チームは理由はそれだけではなく「毎回わずかに違う結末を読むこと、それ自体が、楽しいのではないか」と述べています。
というのも、このユーザーの書き方には、じつに巧妙な仕掛けがありました。
物語を書くものの途中でぶつりと切ってしまうのです。
一見すると、面倒な続きをAIに丸投げしているだけに見えます。
ですが、その”切り方”にこそ、狙いがありました。
以下は、論文が実例として挙げているユーザー(USER)とAI(CHATBOT)とのやりとりの一部です。
USER:
(学校の部室にて……)
ナツキ:(お腹の膨らみを抱えながら)「サクラ……よりによってこんなときに出てこようだなんて……ここで生まれることにしたの?! あと二か月くらい待てなかったの?!」
モニカ:「ナツキ、どうかしたの?」
ナツキ:(顔をしかめて)「どうかしたって? 全部おかしいわよ! 今、破水したの! サクラが下りてきてて、どうしたらいいのか全然わからない!」
[…]
ナツキ:(歯を食いしばりながら)「わ、私の体……
先に述べたようにユーザーの入力した物語は、ここで突然ぷつりと途切れます。
ですがAIは、ナツキの食いしばった叫びの続きを補い、さらにユーザーが序盤に仕込んだ伏線まで拾い上げ、て続きを書き始めます
CHATBOT(GPT-3.5):
勝手にいきみ始めてる! 赤ちゃんが下りてくるのがわかる!」
サヨリ:(電話を見つけて911にかけながら)「救急車を呼んだよ、ナツキ! もうこっちに向かってる!」
[…]
(友人たちと救急隊員の支えを受けて、ナツキはいきみ続ける。そしてついに、永遠にも感じられる時間ののち、新生児の泣き声が部室に満ちる。)
救急隊員:「おめでとう、ナツキ。かわいい女の子だ」
こうして話を引き継いだAIは毎回ハッピーエンドで締めくくります。
救急隊員が駆けつけてその場を救い、「かわいい女の子」の健やかな誕生を告げるのです。
そして、ここが肝心なのですが──同じ導入を与えても、AIが返す細部や結末は、毎回少しずつ変わります。
物語をぶつ切りにすると、その細部の違いがよくわかります。
救急隊員がすべてを取り仕切ることもあれば、仲間たちが自力で出産を助けることもある。
論文が紹介したのは、そのうちの一例にすぎません。同じ物語が、毎回、ほんの少しだけ新しくなるのです。
研究者たちは、その事実をヒントに、この数千回の繰り返しの原動力を探ります。



























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