認知スコアが向上、さらに居住環境にも関係が
チームはプログラムの前後に、15点満点の認知テストを実施しました。
ここでは、覚えた情報を後から思い出す記憶再生、言葉を生み出す能力、時間や場所を把握する見当識などを調べています。
その結果、参加者の平均得点は、プログラム開始前の12.73点から、12週間後には13.26点へ上昇していたのです。。
改善幅はそこまで大きくはないものの、統計的には有意な変化でした。
とくに、改善の大部分を占めていたのは、覚えた情報を後から思い出す「記憶再生」の項目でした。
記憶再生の平均得点は3.44点から3.92点へ上昇していました。
また参加者へのアンケートでも、1年前と比べて自分の記憶力を良く評価する傾向が見られました。
チームはさらに、参加者の居住環境によって結果が異なるかも調査。
その結果、自宅や地域社会で自立して生活している人は、継続的な介護や生活支援を提供する高齢者居住施設で暮らす人よりも、介入後の認知機能得点が高い傾向にありました。
チームは、自立した生活では、買い物、家事、予定管理、移動などを通して、日常的に判断や問題解決を行う機会が多いことが関係している可能性を指摘しています。
日常生活そのものが脳を刺激する環境では、30分間の課題による影響も現れやすかったのかもしれません。
ただし、この違いから「施設で暮らすと認知機能が低下する」と結論づけることはできません。
居住環境は無作為に決められたものではなく、施設の入居者と地域で暮らす人では、健康状態や身体機能、生活上の自立度などがもともと異なる可能性があるからです。
現段階では課題も
今回の研究には、注意点もあります。
この研究では、何も行わない対照群や、別の活動を行う比較対象のグループが設けられていませんでした。
そのため、得点の上昇が音読、手書き、計算によるものなのか、完全な確証が持てません。
また、検査の得点がわずかに上昇したからといって、予定を忘れにくくなったり、家計の管理が上手になったりするとは限りません。
日常生活に必要な認知能力は複雑であり、短いスクリーニング検査だけでは、そのすべてを評価できないのです。
それでも、音読、手書き、簡単な計算は、特別な機器を必要とせず、費用もほとんどかかりません。
自分の好きな本や書きたい内容を選べるため、一般的な脳トレよりも生活に取り入れやすいという利点もあります。
今回の研究だけで、毎日30分のルーティンが認知症を予防したり、認知機能の低下を確実に遅らせたりすると断定することはできません。
しかし、異なる種類の課題を組み合わせて脳を使う習慣が、記憶力を維持するための手軽な方法になる可能性は示されました。
重要なのは、難しい問題に挑戦して脳を疲れさせることではなく、音読し、手を動かし、少し考える時間を毎日の生活に作ることなのかもしれません。































