なぜ「強い芯」なら遠くまで支えられるのか

従来の方式は、どれも音の「静かな点」に物を捕まえていました。
音がほとんど無い点を、強い音でぐるりと囲うのです。
お椀の底にビー玉を置いたところを思い浮かべてください。
転がろうとしても、まわりの壁に押し戻されて真ん中にとどまります。
静かな点がお椀の底、囲む強い音が壁。
従来の音響浮遊は、この形で物を支えてきました。
ところが片側から当てるだけだと、音源から遠ざかるほど支える力が弱まります。
しまいには、物を押し出す向きに変わってしまうのです。

研究チームが変えたのは、この捕まえる場所です。
使ったのは、ゼロ次ベッセルビームと呼ばれる音の束です。中心の細い芯に強い音を集めたまま、遠くまで伝わります。
物を捕まえるのは、静かな点ではなく、この強い芯の中。
こうして、片側から当てるだけで、音源から離れた先の物も支えられるようになりました。
従来のように両側からはさまずとも片側からの超音波だけで、離れた物を触れずに扱えます。
研究チームは、実験の自動化や立体ディスプレイへの応用を挙げています。

この研究で言えるのは、片側からの超音波だけで、音源から離れた軽い小物体を浮かせて運べるということです。
一方、示されたのは発泡スチロールの球のような、軽くて小さな物体の場合です。
重い物や大きな物まで同じように運べるかは、ここからは読み取れません。
音で物を浮かせる研究は、これまで主に、音源と反射板で挟む型の装置で進められてきました。
音で物を浮かせられる場所が、装置のすき間から、開けた空中へ広がりました。
手品師の「糸なんてありません」も、そのうち「超音波もありません」まで言わされそうです。


























