乾いた土地が広がる地球で、雨のにおいはどうなるのか

研究チームは、この結果をもっと大きなスケールで捉えています。
乾燥地は地球の陸地のほぼ半分を覆っており、しかもその面積は広がりつつあります。
そのため、雨のたびにときどき起こるこの微生物由来の放出は、これまで見落とされてきた「反応しやすい炭素」の大きな供給源かもしれない、と研究チームは述べています。
その影響は、地域の大気だけでなく、地球全体の大気の化学にまで及ぶ可能性があるといいます。
とはいえ今回の研究は査読前であり、地球規模の影響についても、まだ「可能性」の段階である点には注意が必要です。
では、気候変動が進むと、雨上がりのにおいそのものはどう変わっていくのでしょうか。
デンマークのオールボー大学で微生物の生理学を研究するイェッペ・ルン・ニールセン教授によると、全体として、雨が多くなる地域ではペトリコールが減り、日照りに見舞われる地域では増えると考えられます。
日照りの間にはゲオスミンがたまっていき、気温が高いと微生物の体内の化学反応が速まるため、細菌はさらに多くのゲオスミンを作ります。
そのため、ようやく雨が降ったときには、より多くのゲオスミンが放たれることになります。
ただしルンドストローム氏は、土が乾きすぎると「ゲオスミンは干上がってしまい、放出されない」とも指摘しています。
反対に雨がひんぱんに降る場所では、香りの成分がたまる時間が足りず、ペトリコールは少なくなります。
さらに温暖化とともに増えている激しい土砂降りは、勢いが強すぎて、香りを空へ運ぶ小さな泡を閉じ込められません。
その代わりに成分は薄められたり、地中に押し込まれたり、地表にあふれた水に混ざったりしてしまいます。
高温や激しい雨で進む土の劣化によって、ゲオスミンを作る細菌が育ちにくくなることも、においの変化に関わっています。
変化は人間の鼻だけにとどまりません。
ニールセン教授によると、ペトリコールが多い地域では蚊が増える可能性が高いといいます。
蚊にとってこのにおいは、乾いた地面が卵を産むのに適した湿った環境に変わったという合図になるからです。
雨上がりにふと感じるあの懐かしい香りは、乾いた日々のあいだに土の中でためこまれていたものであり、同時に空の化学を動かすかもしれない、目に見えない大きな流れの一部でもあるのです。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(雨上がりの土の匂いは4億年続く微生物の生存戦略だった)



















