飼い主の気分を映していたのは、誰のホルモンだったのか
分析の結果、まず浮かび上がったのは、愛情ホルモンのつながりでした。
飼い主の愛情ホルモンが多いほど、そのネコの愛情ホルモンも多いという関連が見られたのです。
研究チームによると、自宅というふだんの環境でこの関連を示したのは、知る限り初めてです。
さらに、飼い主のストレスホルモンが多いほど、ネコの愛情ホルモンは少ないという関連も見つかりました。

一方で、飼い主とネコのストレスホルモン同士には、はっきりした関連は見られませんでした。
飼い主の愛情ホルモンとネコのストレスホルモンの間にも、はっきりした関連は出ていません。
つまり、ネコと飼い主の体の状態は、ストレスホルモンよりも愛情ホルモンを中心に結びついている可能性があるのです。
過去の研究では、ネコから近づいたり体に触れたりすることが、ネコと飼い主の両方の愛情ホルモンの変化と関連すると示されています。
研究チームは、撫でるなどの触れ合いが、このつながりの主な原動力かもしれないと考えています。

また、ネコがゆっくりまばたきするような、触れない親しみの合図も関わっている可能性があるといいます。
飼い主や初対面の人を相手にした行動の試験では、愛情ホルモンが多いネコほど、決められた円の中へ近づいて入りやすい傾向もありました。
では、これらのホルモンは、飼い主の気分とどう関わっていたのでしょうか。
飼い主の気分の悪さと幅広く結びついていたのは、飼い主自身の愛情ホルモンではなく、ネコの愛情ホルモンの方でした。
愛情ホルモンが多いネコの飼い主ほど、怒りや混乱、落ち込み、緊張と不安が低く、気分の乱れ全体も小さい傾向がありました。
ただし家庭ごとにまとめて分析し直すと、関連が保たれたのは混乱と、緊張と不安だけでした。

これに対し、飼い主自身の愛情ホルモンとの関連が見られたのは、怒りの度合いだけでした。
もっとも、飼い主の気分の悪さと最も一貫して結びついていたのは、飼い主自身のストレスホルモンでした。
ストレスホルモンが多い飼い主ほど、混乱や落ち込み、疲れ、緊張と不安が強かったのです。
なお、友好や活気といった前向きな気分と、ネコの愛情ホルモンとの間には、はっきりした関連は出ていません。
また、ネコのストレスホルモンと飼い主の気分との間には、どの項目でもはっきりした関連は見られませんでした。
高木特定助教は、この結果を「興味深い」と語ります。
ネコは室内飼いでいつも家にいるため、その体の状態は飼い主との関係をより映すのかもしれない、というのです。
家の中での距離にも、気分との関わりが見られました。
家の中でネコと接しているときの距離が近い飼い主ほど、活気が高かったのです。

一方、ネコと暮らした期間が長い飼い主ほど、落ち込みや不安が強いという関連も出ました。
ただしこちらは、家庭ごとにまとめて分析し直すと裏付けが得られなかったため、慎重に見る必要があります。
これに対し、ネコとの近さと活気の関連は、家庭ごとの分析でも保たれていました。




