飼い主の「愛情ホルモン」が多いほど、ネコも多いと判明
飼い主の「愛情ホルモン」が多いほど、ネコも多いと判明 / 飼い主の膝の上で、頭を撫でられる三毛ネコです(イメージ写真で、今回の研究に参加したネコではありません)。 Credit: Photo by Şüheda Türkoğlu on Pexels(Pexels のライセンス)
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飼い主の「愛情ホルモン」が多いほど、ネコも多いと判明 (3/3)

2026.10.20 07:30:00 Tuesday

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イヌの研究とは異なった、ストレスホルモンの結果

では、なぜネコでは、飼い主とのストレスホルモンの関連がはっきり見られなかったのでしょうか。

対照的なのがイヌです。

イヌでは、障害物競技(アジリティ)や捜索救助の作業の場面で、飼い主とイヌのストレスホルモンの関連が報告されています。

飼い主と動物のストレスホルモンのつながりを、イヌとネコで比べた図です。イヌではつながりが報告されていますが、今回のネコでははっきりせず、測り方(下の段)も違います。
飼い主と動物のストレスホルモンのつながりを、イヌとネコで比べた図です。イヌではつながりが報告されていますが、今回のネコでははっきりせず、測り方(下の段)も違います。Credit: ナゾロジー編集部(編集部が作成した図)

数か月分の値がたまる毛の中のストレスホルモンでも、同じような関連が見られています。

これは、相手のストレス状態を自分にも映し取る「情動伝染」によるものと考えられています。

実際、イヌは人のストレスのにおいをかぎ分けられ、そのにおいでイヌ自身の感情も左右されることが分かっています。

研究チームは、この違いの背景に、イヌとネコの祖先の暮らし方の差があるかもしれないと考えています。

イヌの祖先は群れで暮らす動物ですが、イエネコは、おもに単独で、状況によっては仲間とも暮らす生き方を保ってきました。

クロアチアの町グラチャツで、寄り添って寝そべる2匹のネコです。イエネコは、おもに単独で、状況によっては仲間とも暮らす生き方を保ってきました。
クロアチアの町グラチャツで、寄り添って寝そべる2匹のネコです。イエネコは、おもに単独で、状況によっては仲間とも暮らす生き方を保ってきました。Credit: Anil Öztas / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

群れの仲間との関係に合わせてストレスを調節するしくみは、単独で生きてきた動物にはあまり必要なかったのかもしれません。

また、イヌでの連動は、人と密に協力するよう選ばれた犬種に特有かもしれず、関係の質にも大きく左右されるという指摘もあります。

ネコも、人の感情のにおいをかぎ分け、行動で反応することは知られています。

しかし、その敏感さは、ストレスホルモンの連動にはつながっていないようです。

パソコンに向かう飼い主を「手伝う」ネコのハムです。こうして人のすぐそばで過ごすネコでも、飼い主とのストレスホルモンの連動ははっきりしていません。
パソコンに向かう飼い主を「手伝う」ネコのハムです。こうして人のすぐそばで過ごすネコでも、飼い主とのストレスホルモンの連動ははっきりしていません。Credit: Smirkybec / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

過去の研究でも、ネコと飼い主の毛の中のストレスホルモンに、はっきりした関連は見られていませんでした。

ただし、イヌの研究は毛や唾液、血液で測っていて、今回の尿とは測り方が違います。

そのため、この比較だけで種の違いをはっきり言うことには限界がある、と研究チームは述べています。

研究チームは、さらに踏み込んだ推測も示しています。

複数のネコを一緒に飼う環境では、ネコ同士がよく触れ合うほど、愛情ホルモンが低いという先行研究があるのです。

これは、群れで暮らす動物でふつう見られる働きとは逆の関係です。

今回の結果と合わせると、家畜化の中で、ネコの愛情ホルモンのしくみが、仲間より人との絆に向かうよう変わった可能性もあります。

ただし、どちらの研究も関連を見たものにすぎず、この考えはまだ確かめられていません。

今回の研究そのものも関連を示したもので、ネコと飼い主のどちらが原因なのかはまだ分かっていません。

ひざに乗るのが好きなネコ、ピャンファーです。ネコと人が日々の暮らしの中でどう影響し合っているのかを、高木特定助教は今後さらに詳しく調べたいとしています。
ひざに乗るのが好きなネコ、ピャンファーです。ネコと人が日々の暮らしの中でどう影響し合っているのかを、高木特定助教は今後さらに詳しく調べたいとしています。Credit: Lil Shepherd from United Kingdom / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)

高木特定助教は今後、ネコとヒトが日々の暮らしの中でどう影響し合っているのかを、さらに詳しく調べたいとしています。

膝の上でゴロゴロ鳴くネコを撫でる日々の積み重ねの中で、飼い主とネコは、同じ愛情ホルモンでひそかにつながっているのかもしれません。

これからネコを撫でる時間は、堂々と「ホルモンのやりとりの時間」と呼べそうです。

ここからは、オキシトシンをもっと知りたい人へ

オキシトシンとは、出産や子育て、人どうしの絆に関わるホルモンです

オキシトシンとバソプレシンの形を、アミノ酸(たんぱく質の部品)の並びで描いた図です。
オキシトシンとバソプレシンの形を、アミノ酸(たんぱく質の部品)の並びで描いた図です。Credit: Damien Gulliver / Wikimedia Commons(Public domain)

オキシトシンは、名前にお産の意味をもつホルモンで、ギリシャ語で「早いお産」を表す言葉から名付けられました。

1980年代以降には、オキシトシンが脳の中でも働き、人どうしの絆や気持ちの調節に深く関わることが分かってきました。

人間関係とのつながりが注目され、今では「愛情ホルモン」のほかに「絆ホルモン」と呼ばれることもあります。

子育てとのつながりも深く、オキシトシンを受け取る仕組みをなくしたマウスでは、出産には影響が無いのに、授乳や子育ての行動に影響が出ます。

体の中ではとても短命なホルモンでもあり、血液中のオキシトシンは5分もたたないうちに半分に減るとされています。

形は、同じく脳で作られるバソプレシンというホルモンとよく似ていて、違うのはアミノ酸(たんぱく質の部品)2つだけです。

人とのかかわりでは、イヌと飼い主が見つめ合ってオキシトシンを高め合う仕組みがオオカミでは見られず、イヌが進化の中で身につけたものだと分かっています。

Q. オキシトシンとはどんな物質?
A. オキシトシンは、9個のアミノ酸がつながってできたホルモン(ペプチドホルモン)です。脳の視床下部という所で作られ、下垂体の後ろ側(下垂体後葉)から血液の中に出されます。

Q. オキシトシンは子宮の収縮とどう関わる?
A. オキシトシンは体の中で、子宮を収縮させる働きと、母乳を押し出す働き(射乳)に関わっています。

Q. オキシトシンはどんな時に出る?
A. 優しくなでたり抱き合ったりといった、肌どうしの触れ合いの時に出ることが知られています。そのため「抱擁ホルモン」とも呼ばれます。

Q. オキシトシンにはどんな効果がある?
A. オキシトシンを鼻から与えると、他人への信頼感が増すという報告があります。また、ストレスに反応する体の仕組みを抑え、気持ちの安定に役立つと考えられています。

Q. オキシトシンには気持ち以外にどんな作用がある?
A. オキシトシンには、脊髄(背骨の中を通る神経の束)で痛みを抑える働きがあることが知られています。また、食べることを抑える物質としても知られていました。

写真で見るネコたち

ナゾロジー図鑑

この記事の生き物No.0005

ネコ Felis catus

ほかに出てくる生き物:イヌ

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