私たちは永久機関の目撃者になれるかもしれません。
「なぜ動いているかわからないけど、とりあえず動いている」という、物理学の常識に反しているシステムの解明に、一筋の光明が射しました。
ポルトガルの科学者たちが、量子力学のパイロット波の理論を使えば、いろいろな実験で観測される奇妙なふるまいを説明できるとする論文を発表したのです。
EMドライブとは、マイクロ波のみで推進力を得る装置で、宇宙旅行のコストを激減させ時間も短縮できると考えられています。通常半年以上かかる火星への旅が、「気軽に二泊三日の火星旅行」といったことも可能になるわけです。
そんな夢の装置は「不可能エンジン」とも呼ばれ、一般的な物理法則では説明がつかないため、これまで大体的な研究はされてきませんでした。NASAによって動作が確認されていたものの、考案者のロジャー・ショーヤー氏ですら「なぜ推進力が生まれるのか」について、満足に説明できない状態だったのです。
しかし昨今、量子コンピューターの実現や量子力学での熱力学第二法則の導出といった、量子力学のマクロ世界への応用研究が急速に進んでいます。
理論物理学者のギュリオ・プリスコ博士によれば、この物理学の発達により、この“不可能エンジン”が可能になるかもしれないというのです。
物理法則が当てはまらない? 「二重スリット実験」から着想を得る
2013年頃、「振動する液体表面の上の微小な液滴は、二重スリット実験時の量子のような挙動を示す」という発見が話題となりました。
二重スリット実験 – 日立公式HP
その不思議な現象に対する解釈は主に2通りあります。コペンハーゲン解釈とパイロット波解釈です。パイロット波解釈とは「量子はパイロット波という空間を伝播する波にのって移動している」とする解釈ですが、この液滴のカオスな挙動がまさに、量子のそれと似ているというわけです。
「このパイロット波に先導(パイロット)されて、液滴が移動している」とプリスコ博士は説明しています。
さらに、液滴の移動は、流体と液滴の材質、およびそれらの相互作用によって決まる、ということがわかってきました。
巨視的世界を記述するニュートン力学の第三法則は、作用があれば必ず反作用がある、と規定しています。しかし、液滴の移動はこの法則にあてはまりません。ここにEMドライブを現実化する突破口があるかもしれないのです。
「量子力学のパイロット波の概念を使えば、ニュートン力学の作用・反作用の法則を回避できるのです」と研究者は述べています。
「逆に言えば、小さい作用で大きな反作用を期待することができるのです」
NASAがEMドライブの研究を続けていると発表して以来、不可能エンジンの原理に関する研究が急増しています。パイロット波理論自体も物理学において広く受け入れられた理論ではなく、EMドライブのシステムについても様々な仮説が立てられています。
そのほとんどは“量子真空理論”に基づくものですが、“マッハ効果”を適用できる、という研究者もいました。
不可能エンジンについてはまだ賛否両論がありますが、ある専門家は次のように語ります。
「もしこれが実現すれば、宇宙旅行に革命をもたらすことになるのは間違いありません。反作用のないEMエンジンの宇宙船ならば、何か月もかかるはずの惑星への飛行が、数日に短縮されるのです。もちろん、コストも激減されます。恒星への旅行も夢ではありません。先見の明がある技術者が、教科書的な先入観にとらわれず、EMエンジンを研究して作り上げたとしても、もはや驚くことではないのです」
しばらく日の目を見なかったEMドライブの研究ですが、このような仮説が出されること自体が、量子世界と巨視的世界が近づいている証拠なのかもしれません。
その時、宇宙旅行とは果たして私たちにとってどのような意味を持つのでしょうか。想像力がかきたてられますね。
via: dailymail.com, e-catworld.com
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