ゆで卵がうまく回るか試したことはありますか?
経験がある人わかるかもしれませんが、なんとゆで卵を素早く回すと自分からむくりと起き上がるんです。
しかしこの現象の説明はすごく難しく、これまでの説を理解するのにはかなりの物理学的知識が必要でした。
それを最近、シドニー大学の物理学者ロッド・クロスが、いとも簡単に説明できることを発見したのです。
http://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6404/aa997b
卵の回転については100年以上前から研究されており、2002年に科学誌Natureに掲載された論文で、回転して立ち上がるメカニズムが発表されています。
そのメカニズムは、ジェレット定数(卵やコマなどの「軸対称回転体」の重心の高さと、回転エネルギーの積)が保存されるため、摩擦によって鉛直面の角速度が減少する、つまり回転エネルギーが減少することで、重心の高さが高くなるということです。
…といわれても、この説明では何がなんだか分かりませんよね。
今回の新しい発見でわかったのは、つまり卵は水平軸方向にも垂直軸方向にも歳差運動をしているということ。
歳差運動とは、自転している物体の回転軸が円を描くように振れる現象のことです。簡単にいうと、コマを回した時にその芯が円を描きながらゆらつく運動のことです。
0:10~の映像が分かりやすいです。
歳差運動はなんとなく分かったけど、そもそもどうしてそんな動きをするの?と不思議に思われるかもしれません。
そもそも歳差運動は、「ジャイロ効果」というものによって生じます。ジャイロ効果とは、一般にコマなど自転運動する物体の姿勢が乱されにくくなることを言います。これは、運動しているものがその運動を保とうとする慣性の法則が働いているためです。
ジャイロ効果によって、回転する物体はそのままの姿勢で回転し続けようとします。しかし重力など他の力が働くことによってその姿勢が乱され、なんとか元の姿勢に戻ろうとします。その結果、コマのようにふらふらと揺れる歳差運動が起こるのです。
色々と説明しましたが、百聞は一見にしかず。ナゾロジー編集部でも、実際にジャイロ効果がどのようなものか確かめてみようと思います!
ジャイロ効果を実験・体感してみた
まずは自転車の車輪を使って実験。
実は自転車を漕いでも倒れないのは、乗っている人のバランスだけではなく、回転運動する車輪がそのままの姿勢を保とうとするからなんです。
よって車輪だけを持って少し倒すと、力を加えた方向と逆の力が手に伝わり、ジャイロ効果が体感できます。
ジャイロ効果は他にも、身近なもので簡単に実験することができます。
例えば昨年爆発的に流行したハンドスピナー。これも自転するのでジャイロ効果を確かめることができます。ハンドスピナーとCDなど円盤状のものがあれば簡単に実験できます。
今回はたまごスープのカップにハンドスピナーをくっつけて挑戦してみました。これは円盤状のものにハンドスピナーをくっつけただけで出来上がります。姿勢を崩さないように運動しているのが分かります。
ハンドスピナー持ってない!という人でも、普通のコピー用紙とテープがあるだけで実験できます。
紙を折りたたんで、リング状になるようテープで留めるだけで道具の完成。
これを回転をかけながら投げることでジャイロ効果がかかって、遠くまで飛びます。
めちゃくちゃ楽しい…
今回シドニー大学が発見したことは、卵が水平軸方向にも垂直軸方向にも歳差運動をしているということです。
コマなどは重力の働きにより、垂直軸方向に歳差運動をします。
一方卵は、重力の他に回転する時の地面との摩擦力によって、水平軸方向にも歳差運動を行っているのです。
水平軸方向に歳差運動することで、卵の先端がもち上がり、直立した姿勢になることで動きが安定します。すると、水平軸方向の歳差運動を引き起こしていた摩擦力もなくなります。そうして卵には垂直軸方向の歳差運動だけが残り、コマのようにずっと起立したまま回転するというわけです。
身の回りの物理現象や発見でも、説明するには難しいものはたくさんあります。しかし実際に体験すると、ちょっとだけ身近に感じられる気がしますね。
via:Phys.org/ translated & text by Nazology staff
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