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α波に人をクリエイティブにする効果を確認 「創造性」の仕組みとは?

2018.12.15 Saturday

Point
・通常、脳は関連性が近い事柄から連想していく
・α波にはその通常の思考回路を抑制し、離れた言葉や突飛なアイディアを生み出す効果がある
・人間の「創造性を生み出す仕組み」の解明が期待されている

「リラックスしているとα波が出る」と聞いたことはないでしょうか。α波とは脳から出る電気信号の一種で、8Hzから13Hzの周波数のものを指します。瞑想時やクラシック音楽を聞いている時に現れやすく、免疫を向上させる効果もあるといわれています。

しかし、ロンドン大学クイーン・メアリーの新しい研究によると、効果はそれだけではないようです。α波は創造性にも関連することが明らかとなりました。この研究は12月12日付でPNASに掲載されています。

Right temporal alpha oscillations as a neural mechanism for inhibiting obvious associations
https://www.pnas.org/content/early/2018/12/11/1811465115

私たちはある言葉から別の言葉を連想するとき、まずそれに近い言葉から連想します。例えば「猫」から最初に連想するのは「犬」や「動物」といった言葉です。そして次に、離れた言葉である「人」や「家族」を連想します。

しかしクリエイティブな発想をしたければ、最初に近い言葉が出てくるのを抑制する必要があります。つまり、脳の中でいつもの思考回路が使われるのを抑制し、未知の思考回路をみつける必要があるのです。

同大学のルフト氏らの研究では、被検者に言葉を連想する作業をしてもらい、右側頭部を電気的に観察しました。すると、高いα波がみられたときには元の言葉から離れた言葉を連想していることを発見。つまり、α波がいつもの思考回路を抑制し、クリエイティブな思考をさせたのです。

例えば、旅行先でガイドブックに載っている道を歩くのではなく、誰も通っていなさそうな道を歩くと新しい観光地を発見することがあります。共著者のバタチャリア氏は、「脳の中でも同じようなことが起きて、未知の思考回路をみつけている」とは説明しています。

先日、グーグルが開発したAI「アルファゼロ」が、囲碁・将棋・チェスを制覇したことは記憶に新しいかと思います。「アルファゼロ」はもともと囲碁用に開発されたソフトウェアで、2017年には囲碁で世界一になっています。これと同じアルゴリズムを使い、将棋やチェスでも世界一になったことが発表されたのです。このAIは過去のデータに頼らない新たなAIとして注目されており、人のように創造性を生み出す可能性もあるそうです。

また、創造的な芸術作品をAIが制作できるテクノロジーも開発されています。このテクノロジーはGAN(敵対的生成ネットワーク)と呼ばれ、人の脳のニューロンのように計算を行い、絵の贋作師と鑑定士のように、模倣と判定を行って新しい絵を創り出すのです。

人が創造性を獲得する機序がもっと研究されれば、AIがより人に近くなり、AIによる美しい芸術作品が手軽に手に入るようになるでしょう。将来的に美術や国語の先生は、宿題を本当に生徒が自分でやっているのか確認できなくなりそうです。

α波が含まれるという音楽は、以下の動画でも視聴できます。

アイディアが浮かぶ秘訣は「幸せな音楽」を聴くことと判明

via: medicalnewstoday , technologyreview, nikkei / translated & text by かどや

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