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腰痛は「早死に」につながる?悪化を恐れて活動を避けることで生じる悪循環とは

2018.12.31 Monday

Point
■腰痛と死亡率の間に強い相関があることが明らかになった
■約14年間の調査期間中に、慢性腰痛を持つ被験者が死亡した割合は、腰痛持ちでない被験者よりも10パーセント以上高かった
■腰痛の悪化や再発を恐れて日常の活動を避けることが、健康に悪影響を及ぼす可能性

10人に1人が抱えていると言われる腰痛の悩み。

腰痛は、世界で最も大きな健康問題と言っても過言ではありません。日常的な姿勢、座りっぱなしの生活様式、体重増加、肥満、加齢といったさまざまな因子が腰痛を引き起こします。

アメリカ国立神経疾患・脳卒中研究所の報告によると、約8割の人が生涯で少なくとも1回は腰痛を経験するそうです。米国で実施されたある電話調査によると、1992年から2006年までの14年間で慢性腰痛に悩む人の数は倍増し、特に女性の数が増えたことが分かっています。

腰痛には急性のものと慢性のものがあります。急性腰痛の場合、数日〜数週間痛みが続いた後に、自然に治ることがほとんどです。ですが、急性腰痛を持つ人のうち約2割は短期間では回復せず、3ヶ月間以上続く慢性腰痛に悩まされることになります。

ボストン・メディカル・センターの研究チームが、中高年の女性は、同年代の男性と比較して腰痛の問題を抱えているケースが多いという仮定のもと、腰痛が女性の日常の活動に与える影響を調べたところ、腰痛と死亡率の間に強い相関があることが明らかになりました。論文は「The Journal of General Internal Medicine」に掲載されました。

Association of Back Pain with All-Cause and Cause-Specific Mortality Among Older Women: a Cohort Study
https://link.springer.com/article/10.1007/s11606-018-4680-7

筆頭著者のエリック・ローゼン氏は、慢性腰痛の分析から後々に身体の障害が現れる確率を予測することで、腰痛と死亡率の関係を理解する手掛かりを得たいと考えました。

研究チームは、40〜80歳の女性8,321名を対象に、約14年間にわたる追跡調査を行いました。まずは調査開始時に、ベースラインとして被験者の腰痛の程度を計測し、2年ごとに追跡調査を行いました。同時に、日々の活動についての質問を被験者に行ったり、彼らの活動を観察したりしました。

その結果、被験者の多くが、歩行、食事の準備、同じ動きを繰り返すといった日常のタスクに困難を感じていることが判明。慢性腰痛が死に繋がる影響の47パーセントは、「短い距離を歩く」「食事の支度をする」といった活動が制限されることに起因していることが明らかになりました。

また、「椅子からゆっくりとしか立ち上がれないこと」は慢性腰痛が死をもたらす影響の27パーセントを、「歩行速度が遅いこと」は24パーセントをそれぞれ説明していました。

さらに、被験者の半数以上が調査期間の途中で亡くなりましたが、腰痛持ちでない女性では約54パーセントが死亡したのに対し、慢性腰痛を抱えた女性では約65パーセントが死亡しました。

慢性腰痛を抱えた女性は、そうでない女性と比べて、心血管の病気やガンの発症率が高かったとのこと。腰痛と死亡率の間に顕著な相関が存在する可能性が明らかになったのです。

腰痛の症状そのものが日常生活に支障を直接与えている可能性も否定はできませんがが、ローゼン氏はむしろ、腰痛の悪化や再発を恐れて日常の活動を避けることが、健康に悪影響を及ぼすのではないかと推測しています。

日常の活動を行えなかったり、避けたりすることが、体重の増加や、その他の病気の発症や進行を引き起こし、結果的に早死にに繋がる…という悪循環が生まれるのでしょう。

現在全体人口の約8パーセントを占める65歳以上の高齢者の割合は、2050年までには17パーセント近くに上ると推測されています。来るべき超高齢社会の最大の課題の一つは、いかに「健康に」長生きするかということ。

ローゼン氏は、生涯にわたる長期的な腰痛のケアにより、人々の生活の質を向上させ、結果的に健康寿命を伸ばせるのではないかと、研究意義を語っています。

腰痛が健康にもたらす長期的影響を評価するには、今後さらなる調査が必要ですが、ローゼン氏らの発見が、腰痛の効果的な治療法やガイドラインを見つけるために行われる将来の研究への道を切り開いたことは確かです。

reference: medicalnewstoday /  written by まりえってぃ

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