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すべての科学論文を完全オープンアクセスで公開する計画「プランS」が2020年からヨーロッパで開始

2019.02.27 Wednesday

Point
■欧州委員会が、科学論文を発表後すぐに無料で公開する「プランS」を、2020年から欧州の一部で開始する
■「プランS」のオープンアクセスは、計画に賛同した出資者が出版社に掲載料を事前に支払って、OAを永久に保証するもの
■科学雑誌の大半は、中国やアメリカ、インドにあり、計画の促進にはヨーロッパ以外の協力が必須となる

科学界がさらに盛り上がる…かも?

発表された科学論文を、すべて無料で即座に読めるようにする計画「プランS」が、2020年1月1日からいよいよ開始されます。

「プランS」は、欧州委員会(EC)により昨年の9月に発表された計画で、これまでのところ13カ国にある16団体の資金助成機関が賛同している状況。そのほとんどをヨーロッパの団体が占めています。

原則として、計画に参加している資金助成機関からお金を借りて行なった科学研究は、すべて完全にオープンアクセスできるものとして一般公開しなければなりません。

立案者の一人であるECのロバート・ジャン・スミッツ氏は「論文の有料公開が、科学研究における情報の循環を悪くしている」と指摘し、アカデミック世界全体での研究促進を目的として「プランS」を立ち上げました。

発足当初は、ヨーロッパ各国の賛同がほぼ全体を占めていましたが、昨年の12月に中国もECと協定を結び、計画は勢いを増しています。スミッツ氏によると、この計画が成功するためには、ヨーロッパ以外に属する資金助成機関の賛同が必須であるとのこと。

というのも、現在、有力誌も含めて科学雑誌の多い国は、1位が中国、2位がアメリカ、3位がインドと上位3つをヨーロッパ以外の国が占めているからです。そのため、「中国が計画に参加してくれた利益は非常に大きい」とスミッツ氏は驚きつつも喜びを示しています。

問われるOAの仕組み

Credit: photo ac

「プランS」におけるオープンアクセス(OA)の仕組みは、計画に賛同した助成機関が、出版社に対して事前に「論文掲載料」を支払っておくことで、論文を永久的な無料公開を保証するというものです。

またOAの掲載費用は、欧州内で標準化されて上限が設定され、著作権は著者に属します。それから、「プランS」は「完全なOA方式」を目指しており、現在の出版界のおよそ半分を占めている「ハイブリッド型OA」も全面禁止とする予定です。

「ハイブリッド型OA」は雑誌自体は購読誌ですが、論文著者が掲載料を支払うことでOAとなるもので、学術雑誌全体の45%を占めています。また有料の購読誌は、全体の38%なので、もし「プランS」がこのまま開始されれば、研究者はおよそ80%以上の雑誌に論文発表をすることができなくなるのです。

完全にOA型を採っている雑誌は、わずかに15%しかなく、これは「プランS」の大きな問題点として懸念されています。

それでも中国に続き、アメリカやインド、南アフリカにある国際的な資金助成団体も「プランS」への参加に前向きな様子。ECも、残りのヨーロッパ各国にある助成機関に対して賛同を呼びかけています。

ヨーロッパをメインに来年1月からスタートされる「プランS」が、今後世界中に拡散し、科学界全体が盛り上がっていくことを期待しましょう。

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reference: sciencemag.org / written & text by くらのすけ

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