・脳では記憶が視覚を操作している可能性
・マウスをVR空間で走らせると、マウスに見えている仮想の場所によって脳の「海馬」の働きに変化
ちょっと楽しそう…?
マウスとバーチャルリアリティ(VR)空間を使った研究で、記憶が視覚を操作している可能性が明らかになりました。
https://www.nature.com/articles/d41586-019-00791-w%22
マウスが走り抜けている(と思いこんでいる)のはVR空間で、走っているのは回し車の上。回し車の回転に合わせて、ストライプとチェックの模様をスクリーンに映写しています。
一生懸命走っているマウスには、いったい何が見えているのでしょうか。マウスの記憶を知ることはできないので想像ですが、昔住んでいた排水口を走っているつもりだったり、実験用のケージから逃げ出しているつもりだったりするのでしょうか…?
このVR空間を走るマウスの脳を調べると、脳の「海馬」と呼ばれる部位の働きに変化がみられました。脳の「海馬」は記憶に関わるところです。
VR空間を走るマウスの「海馬」は、自分が走っていると思っている場所、つまり映写した模様によって視覚に関係する脳の反応を変化させていました。つまり、記憶が視覚をコントロールしている可能性があるのです。
マウスとVR空間を使った研究では、過去にも記憶と感覚がつながっていることが示されています。例えば「匂いのする方向に餌がある」と学習させたマウスは、餌のないVR空間でも匂いを追いかけました。
また、人でも同じような研究があります。以前ナゾロジーで紹介しましたが、視覚の操作により、そうめんを食べているのにラーメンの味がする、という研究もあります。「見た目はラーメン」という記憶が「味もラーメン」という感覚につながってしまうのです。
集中してレーシングゲームをやっている人では、実際に運転するときに使う脳の部位が使われているそうです。スポーツのイメージトレーニングも、イメージだけで運動に関係する脳の部位を働かせる効果をねらっています。VR体験で脳のいろんなところが鍛えられるのだったら、『ガンダム』の世界を体験するだけでシャアのように素早い動きができるようになる……わけないか。