■地球から7800光年離れた「はくちょう座」に変わった動きを見せる「ブラックホール」がある
■ブラックホールの周囲には降着円盤があり、中心部から強烈なジェットが噴出されるが、方向がコロコロ変わっていた
■これはブラックホールの「回転軸」と降着円盤の「軌道面」とのズレによる歳差運動が原因だった
一風変わった動きを見せるブラックホールのメカニズムが解明されたようだ。
地球からおよそ7800光年離れた「はくちょう座」に「V404 Cygni」と呼ばれる天体がある。この中心部にあるブラックホールからは強烈な放射線が噴出しているのだが、それが「見たことのない動きをする」らしいのだ。
専門家によると、噴出される放射線ジェットの向きがコロコロ変わるというのである。
これが天文学者たちの頭を悩ませてきたが、オーストラリア・カーティン大学の研究によると、ブラックホールの「回転軸」と降着円盤の「軌道面」のズレが原因だと判明した。
研究の詳細は、4月29日付けで「Nature」に掲載されている。
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1152-0
ブラックホールから噴出する放射線
「V404 Cygni」が発見されたのは1989年のことだ。
この天体は連星のような構造をしており、中心部には太陽の約9倍の重量を誇る「ブラックホール」が位置し、その周囲を巨大な「恒星」が6.5日周期で公転している。
この恒星は太陽の7割を占める重量があり、あまりに大きいため、恒星表面はブラックホールの重力によって吸引されている。こうして恒星表面から落ちていく塵やガスは、ブラックホールの周囲をグルグル回って降着円盤をつくる。
そしてブラックホールに近接する強力な磁場によって、細い放射線が光速に近いスピードで、ジェットのように噴出(噴出)するというわけだ。
しかもアウトバーストによって生み出されるエネルギー量は、太陽が3日かけて放出するよりも強いエネルギーを「毎秒ごとに」噴出しているのだ。
さらに強力なエネルギー放射により、降着円盤の内側数千キロ付近がドーナツ型に膨れ上がっている。画像の青い部分がそうだ。