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AIが突然教えていないはずの「数の概念」に目覚める

2019.05.14 Tuesday

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Credit:depositphotos

Point

■AIが教えられることもなく、数の概念を理解した例が発表された

■数は抽象的な概念で、数えるなどの行為を経ずに瞬時に「数」を判断することは非常に高度な思考活動となる

■今回の報告では、AIは視覚情報用いた学習中に、ネットワーク内の数に関するユニットが突然反応し「数」の概念を理解しはじめたという

私たち人間は、「5」までの数ならパッと見で判断する事ができる。4匹の猫、4個のリンゴが並んでいるのを見て、いちいち1つ2つと数える人はいないだろう。

それは私たちが「数」という概念を感覚的に理解できているためだ。

ところがコンピュータには、これが出来ない。彼らは計算は得意だが、「数」という抽象的な概念を理解しているわけではないからだ。

これが、人間とコンピュータの違い…いや、違い「だった」。

今や、コンピュータは数の概念さえをも獲得しはじめたようだ。AIが人間が教えたわけでもないのに数の感覚を発達させ、その概念に理解を示したという論文が、雑誌「Science Advances」に掲載されている。

Number detectors spontaneously emerge in a deep neural network designed for visual object recognition
https://advances.sciencemag.org/content/5/5/eaav7903

AIに「数」を数えさせる方法

コンピュータに数を数えさせる場合に、もっとも難しいのは、画像の中の数える対象物を理解させる事だ。

例えばリンゴを数える場合でも、それぞれのリンゴが全て同じように見えるわけではない。個体ごとに微妙な違いがあるし、光の当たり方、位置なども状況により変化する。

微妙な違いがあったとしても、リンゴはリンゴなのだとAIが理解するためには、反復的な訓練が必要になる。

Credit: pixabay

この訓練ではAIに大量の画像を見せ、そこに対象物を含むかどうかを判断させる。人間がその結果を採点し、AIはそれを元に判断方法を調整するわけだ。

次第にAIは人間のジャッジを受けなくても、対象物の共通点を見つけて「同じもの」という判断を下せるようになる。

この技術は「ディープニューラルネットワーク」と呼ばれている。ネットワークの層が深くなるほど情報は抽象化されていき共通点のみを見つけやすくなっていく。そして、一番深い層においてAIは「リンゴ」という概念を獲得するのだ。

ここに至って、始めてAIは数を数えることができるようになる。数える対象物を見つけるたびにカウンターに数を足していき、数え終わった段階でのカウンターの数を提示するわけだ。

ただ、この仕組みを聞いてわかるように、このAIでは「数」という概念を理解しているわけではない。単に数える対象を見分けてカウンターを回しているだけだ。対象物に順番に番号を振っているだけに等しく、「3」はただのマークに過ぎない。

子供の学習の場でも言われることだが、ただ数えただけでは「数」の概念を理解しているという事にはならないのだ。

次ページ「数の感覚」を自然に身に着けたAI

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