再イオン化よ、なぜ起きた?
宇宙の再イオン化のおかげで暗黒時代は終わることになるのだが、研究者たちには解決しなければならない問題があった。
主任研究員のステファン・ド・バロ氏は「再イオン化が起こったのは事実だが、その前に何がキッカケとなったのかが分かっていない」と話す。
電離(イオン化)を起こすには、それ相応の高エネルギーを放つことのできる天体がなければならない。果たして暗黒時代にそのような光り輝く天体があったのか?
この謎を解明するため、研究チームはNASAの「スピッツァー宇宙望遠鏡」を用いて、天体観測を試みた。スピッツァーは2003年に宇宙空間に打ち上げられた赤外線望遠鏡であり、地球を追いかけるようにして太陽軌道を周っている。
チームはスピッツァーを用いて、ビッグバンから約10億年後に誕生した最初期の天体、つまり「宇宙の再イオン化」が終わる直前に存在した天体に焦点を当てた。
チームは、計135の銀河を200時間以上にわたって観測。その結果、それらはすべて2種類の特殊な赤外線の波長で輝いていることがわかった。
それら赤外線は、イオン化光が初期銀河内に漂っていた水素および酸素ガスと相互作用することで生じていた光だったのだ。
これは初期銀河に水素とヘリウムから構成された巨大な若い星々が存在していたことを示唆する証拠だ。しかもこの星たちは少量ながら、比較的重い元素である炭素や酸素、窒素を含んでいることも分かっている。
しかし宇宙で最初に星が誕生した時は、まだ重い元素がこの世に存在しなかった。そのため、水素とヘリウムという軽い元素しか含むことができない。要するにこの巨大星は、宇宙最初の星ではないということだ。
もしかしたら今回の星が、宇宙の夜明けを告げた光り輝く星なのかもしれない。
研究者たちはこの巨大星が、宇宙発達のミッシングリンクを埋めてくれることを期待している。