一様ではない月の重力分布
「重力の異常だとかいうけれど、そもそもそんなものどうやって測ったんだよ?」と思う人もいるかも知れない。
月の重力分布に異常があるという事実については、NASAの研究チームなどにより68年頃から報告されていた。ただ具体的にどこに異常があるのか? 理由は何なんなのかについては明らかになっていなかった。
この調査を行うために打ち上げられたのが、NASAの月調査機グレイルだ。
これは2機1対の調査機で、月の周囲をまわりながらお互いの距離の差を測定している。重力が異なれば当然軌道や高度といった位置情報に変化が生まれるため、それを元に重力の分布を測定しているのだ。
ちなみにグレイルは2012年12月に調査を終了し、月面へ衝突させて廃棄されている。なんとも豪快な調査終了だ。彼らもまた月のクレーターになってしまったようだ。
重力の分布調査は月の表面の地形や、内部構造を知るための重要な資料になる。地形が盛り上がっている場合には一般的に重力は強くなり、くぼ地では弱くなる。また、マグマが結晶化した鉱脈などが発生している場合、その周辺の重力は強くなる。
グレイルは月の重力異常について、南極部分で特に乱れがあることを発見している。
月の重力異常や地質、地形については、日本も月探査機のかぐやを打ち上げて調査を行っている。こちらの調査結果では月の『海』に当たる場所に強い正の重力異常があることを確認している。