窒素不足を補うための貴重な栄養源
魚が生息していないこの沼地の食物網において、サンショウウオは重要な捕食者であると同時に、獲物でもあるらしい。
捕獲は、サンショウウオが幼生から成体へと姿を変え、陸上へ移動する際に多く起きていた。赤ちゃんたちは、罠に引き寄せられたり、他の捕食者から逃れようとしている時に、落とし穴に落ちてしまうようだ。
罠に落ちたサンショウウオは早いもので3日間、遅いもので19日間で死に、その後は袋状の葉の内部に蓄えられた水が含む消化酵素によって分解される。また、熱や飢え、病原菌などの他の要因で死に絶える個体もいるようだ。
ムラサキヘイシソウがサンショウウオを栄養源とする理由の一つには、沼地の土壌が栄養素、とりわけ窒素に乏しいことが要因のようだ。足りない栄養源を補うために、サンショウウオを利用するわけだ。
アジアには別の種の食虫植物が存在し、それらは昆虫やクモに加えて、時には小さな鳥やネズミを捕えて栄養源とすることもあるが、食虫植物がサンショウウオを捕える例はこれまでに観察されたことがない。
「草食系」など大人しい生き物代表のようなイメージの植物だが、実はとんでもない大食漢も存在するのである。