Point
■フロリダ州立大学の研究所が、世界で最も強い磁場を作り出す小型マグネットの開発に成功
■マグネットが発生させる磁場は45.5テスラに達し、MRIの20倍以上に匹敵する
■粒子検出器や核反応リアクターなど多方面での応用が期待されている
フロリダ州立大学にあるNational High Magnetic Field Laboratoryが、地球上で最も強力な磁場を作り出すマグネットの開発に成功した。
マグネットのサイズはトイレットペーパーの芯ほどで、重さもわずか390グラムだ。
しかもこの軽さにもかかわらず、発する磁場は45.5テスラ(磁場単位)に達し、これはMRI(磁気共鳴画像診断)の20倍以上に匹敵するという。
研究の詳細は、6月12日付けで「Nature」に掲載されている。
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1293-1
超伝導体に使われた特殊素材「REBCO」

今回開発されたマグネットが登場する以前に世界記録を保持していたマグネットも同研究所で開発されたものである。磁場の威力は45T(テスラ)に及ぶが、マグネット自体が非常に巨大で重さはなんと35トンにも達していた。
この記録は1999年から20年に渡って抜かれていなかったのだが、研究所自身が記録を塗り替えることに成功した。
研究チームによると、マグネットに使用されている超伝導体の素材を変えることで小型化および磁場の強化に成功したという。使用されたのは「REBCO」と呼ばれる物質で、「希土類バリウム酸化銅(=rare earth barium copper oxide)」を意味する。
REBCOは45Tマグネットに使われていたニオブ合金の2倍の電流を運ぶことが可能となっている。これにより実証テストでは、前回の記録を半テスラ上回る45.5Tの実現に成功している。