Point
■HIVに感染した動物のゲノムからHIVを除去する治療法が発表された
■ARVにLASER ARTという処理を加えることで薬剤が細胞膜を通過し、その結晶構造によって長期的効果が望める
■CRISPR-cas9という遺伝子操作技術によって、ARVが取り逃した細胞からHIV遺伝子を切り取る処置を行い、ARVの効果を補填
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/22984
ついに抜本的治療法なるか?
米テンプル大学医学部の研究チームが、HIVに感染し得た動物のゲノムからHIVを除去する治療法を発表した。論文は、雑誌「Nature Communications」に掲載されている。
https://www.nature.com/articles/s41467-019-10366-y
既存のARV治療の限界に挑む
強力な抗レトロウイルス薬(ARV)の開発によって伝搬の可能性は劇的に減ったものの、現行の治療法に限界があるのも事実だ。
ARVは、正常な細胞を感染させようと活発に働いている最中のウイルスに対しては高い効果を発揮するが、活動休止中のウイルスにはあまり効き目がない。
しかもHIVウイルスは、ARVのこの特性を「学習」するように進化を遂げつつあり、いずれ変異してARV耐性を獲得する恐れさえあるという。
さらに人間の免疫が弱まった途端、潜在するウイルスが複製を再開するというパターンもある。
ウイルスの活動状態にかかわらず一つ残らず駆逐することができれば、それはARVよりはるかに優れた解決法になること間違いなしだ。
そこで今回研究チームは、29匹のマウスを対象に、ARVと遺伝子操作技術を組み合わせた治療を施す試験を行った。
すると驚くことに、治療を受けたマウスの3割から、ウイルスが跡形もなく消えたというのだ。