VR空間でも身体錯覚は起きる
そして研究チームはこの錯覚を応用して、VRでの実証テストを実施しました。
被験者にはVRヘッドセットを装着してもらい、仮想現実の中で人間以外の動物(ゴリラやトラなど)になって、仮想身体の身体を見つめてもらいました。被験者が仮想身体を注視し続けている間、現実身体と仮想身体の胸あたりに同じような刺激を与えます。
すると被験者はラバーハンドイリュージョンと同じように、仮想空間の身体を自分のものと感じたのです。

しかし実験には限界もあり、錯覚が起こるのは仮想空間と現実空間の身体に対して同じ場所に同じ刺激を与えた場合のみ。つまり羽のあるコウモリや足が8本もあるクモの動きは、人間には模倣不可能なため、錯覚現象は崩れてしまうのです。
ところが研究チームはこの問題を、ラバーハンドのような刺激付与の方法ではなく、視覚的な合図だけでおこなうことに成功しました。
その方法は、被験者の手や指といった身体の動きを微細なレベルで検知し、VR空間に反映させるというもの。これにより被験者は、現実身体とかけ離れた仮想身体のシンクロ感覚を得ることが可能になったのです。
実験に参加した37名の被験者の報告によると、クモやコウモリに対する身体所有感は人間のアバターと同レベルであることが分かっています。
今後の改良次第では、映画『レディ・プレイヤー1』のような刺激対応型スーツが開発されるかもしれませんね。