毛包を本人の細胞からクローン生産
健康な毛包を埋め直すことで毛髪を再生させる方法は以前から取り組まれてきましたが、それはどれも背中や脇といった別の場所や、他人の頭部からの移植というものでした。
しかしこの方法では、移植された部分の免疫システムが拒絶反応を起こすリスクが極めて高いのです。そこで研究チームは本人の細胞を使用することで、毛包をクローン生産する方法を採用しました。
このクローン毛包を休眠状態の頭皮に移植することで、新たに健康な毛髪を作り出すことが可能となるのです。
一方で、このクローン毛包が長期的に形を止めることができないという問題も発見されています。研究チームによると、クローン毛包は時間の経過とともに徐々に溶けて、構造が崩れ始めるといいます。
そこでコロンビア大学の皮膚科学者であるアンジェラ・クリスティアーノ氏により、3Dプリント技術を使った毛包の形を崩さないための足場が製作されました。これを使うことでクローン毛包の形を安定させ、毛包がまっすぐ同じ方向に成長できるようになったのです。
先月行われた国際幹細胞研究会議では、本研究チームのジェフ・ハミルトン氏により「マウスに人の毛包を移植することに成功した」と発表されています。こちらが実際の画像。
まだ人へのクローン毛包移植は行われていませんが、あと1年半ほどで人を対象とした臨床試験が可能だそうです。
すべてのプロセスがクリアされれば一般への導入も開始されるでしょうが、手術費用はかなり高額なものとなると噂されています。本人の細胞を用いた毛包のクローン化と3Dプリント技術には膨大な費用がかかるため、技術の進歩により低コスト化できるまでは、裕福層だけの特権となるかもしれません。
技術の進歩による病気の治療は嬉しいことですが、同時に「髪の沙汰も金次第」な世知辛い世の中にもなってきているようです。