原始惑星と原始木星の正面衝突シナリオ
これに対して、初期の太陽系において、巨大な原始惑星と誕生したての木星が正面から衝突したという説が唱えられました。
この主張に対しては、当初研究チーム内でも懐疑的な声が多かったといいます。
しかし、初期太陽系の状況や、巨大原始惑星の衝突による木星形成の影響を何千ものコンピューターシミュレーションにより計算した結果、この説はかなり信憑性の高いものであることが示されました。
3Dシミュレーションの結果では、2つの原始惑星の衝突によってコアが混ざり合い一様に広がっていく様が再現されています。
この結果から、木星は45億年前に発生した惑星衝突の影響で、未だにコアが撹拌されていて、重元素が低密度に広がった状態になっていると考えられています。そして、再びコアが落ち着いて中央に重元素が密集するまでには、まだあと数10億年近い時間が必要だと言うのです。
こうした惑星同士の衝突は、初期の太陽系では珍しいことではなかった可能性があり、木星とよく似たガス惑星である土星でも同じ様なことが起きていた可能性があります。
またこうした天体衝突が、木星と土星の構造的な違いを生んだのではないか、と研究チームは予測しています。
45億年も前の衝突の影響が未だに残っているとは、相変わらず宇宙の壮大さには驚くばかりです。