Point
■NASAの木星探査機「JUNO」が行った重力測定の結果、木星コアは予想外に低密度であることが明らかとなった
■木星のコアを形成する重元素は、中心に密集しておらず、木星直径の半分程度の範囲に広く分散している
■この原因について、45億年前の初期太陽系で、生まれたての木星と地球の10倍近い質量を持つ原始惑星が正面衝突していた可能性があるという
割としょっちゅう隕石が落っこちていると噂の木星ですが、実は太古の昔、惑星と正面衝突していた可能性があるという研究が発表されました。
2011年に打ち上げられたNASAの木星探査機「JUNO」は、外からでは見えない木星の内部構造を明らかにするべく調査を行っていましたが、重量測定の結果、木星のコアが非常に低密度であることを発見しました。
重元素が惑星コアの中央に密集せず、広く分散して存在することは、惑星形成の理論上考えにくい状況です。
この低密度コア形成の原因が、初期太陽系における若い木星と原始惑星の正面衝突だというのです。これはシミュレーションによって、かなり高い可能性で起こっていたことが示されています。
この研究は、中国中山大学、米ライス大学、日本のアストロバイオロジーセンターなどの研究者による国際チームにより発表され、科学誌Natureに8月14日付けで掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1470-2
謎多き木星コア
木星の様な巨大ガス惑星の形成については、謎な部分が多く、現在に至るまで様々な議論が交わされています。
通常の惑星同様、岩石が集まってコアを作る場合、木星レベルまで巨大な質量になるには時間がかかり過ぎます。
そこで考えられたのが、微惑星が合体してコアを形成したという説です。地球よりも遠い、太陽の熱が届きにくい軌道では、微惑星に凍りついたガスが含まれており、通常より重いコアを早い時間で形成しやすいためです。
こうして形成された重いコアにガスが取り巻かれていき、木星は生まれたと考えられていました。
しかし、過去の調査では理論予想に対して木星コアが巨大過ぎるという問題が指摘されていました。また、木星は分厚いガスに取り巻かれていて、コアの詳しい状態は不明だったため、形成の過程には多くの謎が残っていました。
こうした木星の謎を解明するため、外からは見えない木星の内部構造を調査する木星探査機「JUNO」が派遣されました。
しかし、この「JUNO」がもたらした調査結果は、さらに天文学者たちの頭を悩ませるものになったのです。
「JUNO」の重力測定の結果によると、木星のコアは非常に低密度で、コアを形成する重元素が直径の半分近い範囲に一様に広く分布している状態だったのです。
これは岩と氷でできた高密度コアが中心に存在するという従来の説に反しており、木星形成の謎がより深まるものとなってしまいました。