Point
■哺乳動物のあくびの長さが、脳のサイズと、大脳皮質のニューロンの数に比例することが判明
■あごを大きく開いて深く息を吸い込むと、血流の増加によりブドウ糖や酸素が脳へ運ばれ、脳の働きが改善する
■霊長類やゾウなどの一部の非霊長類は、他の動物よりニューロンの数が多いため、長いあくびを必要とする
あなたの周囲に、よく大きなあくびをする人はいますか?
その人は、もしかしたらやる気がないわけではなくて、単に大きな脳を持っているだけかもしれません。
最近の研究で、哺乳動物のあくびの長さが、脳のサイズと、大脳皮質のニューロンの数に比例することが明らかになりました。ニューヨーク州立大学で「あくび学」を研究するアンドリュー・ギャラップ氏による論文が、「The Royal Society」の雑誌に記載されています。
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsbl.2016.0545
あくびの長さとニューロンの数は比例する
多くの脊椎動物が持つあくびの習慣ですが、実際その仕組みはほとんど解明されていません。
あくびは一般的に、眠気や退屈のサインとして捉えられていますが、身体の中で重要な生理学的役割を担っています。筋肉の疲れにはストレッチが効くように、脳の疲れにはあくびが効果的なのです。
ストレッチをすると、身体の特定の部位えの血流が増加します。同じように、あごを大きく開いて深く息を吸い込むと、頭部に血液が巡り、ブドウ糖や酸素が脳へ運ばれます。また、あくびにはヒートアップした脳を冷却する効果もあります。
このことから、ギャラップ氏らは「大きな脳を持つ動物ほど長いあくびを必要とする」という仮説を立て、その真相を確かめるため、YouTubeに投稿された動物のあくびの動画200本を分析することにしました。
犬、猫、ハリネズミ、オポッサム、キツネ、リス、ヒトなどの霊長類を含む24種の動物のあくびの長さを計測し、それらを各動物の平均的な脳の重さと皮質ニューロンの数と照らし合わせたところ、長いあくびをする動物ほど、脳が重い傾向にあることが明らかになりました。
また、あくびの長さと、皮質ニューロンの数で判断される脳の複雑性の間には、さらに顕著な相関が見られました。